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実習重視の授業で製造業の基礎を習得
〔機械エンジニア科(普通課程:1年)〕

 愛知県が設置・運営する公共職業訓練施設の一つである「愛知県立名古屋高等技術専門校(以下、名古屋高等技術専門校)」。就職に必要な技能や知識を習得するための訓練を行っており、特に実際の現場で必要とされる技術習得に重きを置いた、実習重視のカリキュラムが特徴です。

 今回は名古屋高等技術専門校の普通課程3科の中から、機械エンジニア科にフォーカスし、訓練課主任専門員の廣瀬さんにインタビュー。モノづくりに必要な加工の基礎技能や技術に加え、今後の製造業の現場で不可欠となるデジタル技術を習得する訓練内容、取得できる資格、将来の就職などについて伺いました。


7割を占める実践型授業でスキルアップ


 名古屋高等技術専門校の応募資格は、高等学校卒業または同等以上の学力を有すると認められる34歳以下(入校年度の4月1日時点)の人が対象で、新規学校卒業者や離職して再就職を目指す人などを受け入れています。
 在籍者は、高校を卒業して入校した10代の訓練生から、社会経験を経て入校した30代の再就職希望者までさまざまです。


 今回ご紹介する機械エンジニア科の訓練期間は1年。座学や実習など1400時間の授業を通して、製造業に従事するために必要となる基礎的な知識や技術を学ぶことができます。最大の特徴は、約7割を占めるという実技を中心とした実習時間の多さです。
 工作機械の操作をはじめ、工作機械を使った実践的な部品加工などの技能を習得。機械加工をする上で重要となる製図や測定といった製品設計、加工に関する幅広い分野を学んでいきます。
 また、コンピューター数値制御(CNC)によって、自動で金属などの材料を加工するNC旋盤やマシニングセンターを使用したNC加工実習も充実しているので、デジタルを駆使した最新のモノづくりの現場でも活かせるカリキュラムになっています。

 廣瀬さんはカリキュラムについて「製図作業ではコンピューターを使った2次元・3次元CAD作業のみならず、手書きによる製図作業も訓練します。また加工作業については、主流であるNC加工に限らず、手動でハンドルやレバーなどを操作する汎用工作機械を使った旋盤作業やフライス盤作業の力も養うことができます。これはコンピューターを操るだけではなく、自分自身の五感を使って基礎的な部分をしっかりと身に付け、身体にしみ込ませるためです。たとえ操作するものが工具や機器からコンピューターに代わろうとも、モノづくりの本質や基本構造について把握した上で、実感を持って作業にあたれる人材に育ってほしいと考えています。」と話します。


製図室で手書きによる製図作業も訓練します



 こうした実践形式の訓練を可能にしているのが、充実した設備です。普通旋盤20台、フライス盤10台、その他各種工作機械7台を備えていることで、訓練生一人ひとりが機器に触れる時間をしっかりと確保できます。また、コンピューター30台、NC旋盤1台、マシニングセンター2台、3Dプリンター1台などデジタル作業に対応した実習機器も備えています。


ずらりと並ぶ普通旋盤の実習機器


30台のコンピューターが並ぶCAD/CAM室


3Dプリンターを配備



 さらに、専門的な知識や技能のみならず、コミュニケーション能力の育成にも注力しています。話し方、接遇、電話応対など、社会人として身に付けておきたいマナーに関して、外部講師による講義や就職相談を定期的に実施。専門校修了後に社会で活躍するための基盤を培います。


【習得をめざすスキルと主な訓練・支援内容】
◆図面(書く、読む)
 手書き製図作業/2次元CAD作業/3次元CAD作業
◆測定(測定器が使える、測定ができる、評価・品質管理ができる)
 測定実習
◆加工(段取りができる、工程を考える、切削ができる)
 旋盤作業/フライス盤作業/マシニングセンター/NC旋盤/各種研削盤/3Dプリンター
◆人づくり(社会人マナー、コミュニケーション能力、5S〈安全の基本となる職場環境の改善活動:整理・整頓・清掃・清潔・しつけ〉)
 生活指導/インターンシップ/就職サポート




訓練生の声​


訓練に励む訓練生の磯村さん


 私は大学で機械工学を学んだ後、新卒で就職した企業でモノづくりの現場に携わっていました。しかし人員配置の都合により、機械設計の部署へ異動することに。10年ほど勤めましたが、もう一度製造の現場に従事したいと思い、転職を決意しました。
 再就職を考える上で、名古屋高等技術専門校への入校を決めた一番の理由は、改めてモノづくりの基礎を一から学び直したいという思いです。
 入校後の日々の学びを通して、この専門校は、大学時代に学んだ知識と企業で経験したシビアな現場体験をつなぎ、抜け落ちていた重要な核の部分を構築できる貴重な場所であると実感しています。
 探究する楽しさ、立ち止まって仕組みについて考える時間、基となっている原理を紐解く喜び――。理論的に解いていく大学で学んだ学問的な知識と、効率化や生産性重視の波にもまれながら、ミスなくこなすことに追われていた社会人時代の業務。両方を経験したからこそ、今一度立ち止まってモノづくりと向き合うことができる今の環境には、感謝の気持ちでいっぱいです。
 今後の道について、まだ具体的に決めているわけではありませんが、今感じている“理論と現場力の隙間が埋まり、自分の力として実を結びつつある感覚”は、きっと社会に出た時に大きな自信として私を支えてくれるのではないかと思います。


関連資格取得へのサポートで就職を後押し


 入校希望者や修了生、修了生の就職先企業が魅力に感じている名古屋高等技術専門校のメリットの一つに、資格取得サポートが挙げられます。モノづくりの現場で役立つ多彩な資格の取得に向けて、必要となるトレーニングや学びがカリキュラムに組み込まれているので、授業を通してスキルアップが可能です。


【取得をめざせる主な資格】
・国家技能検定 機械加工職種 普通旋盤作業3級
・国家技能検定 機械・プラント製図職種 機械製図CAD作業3級
・アーク溶接特別教育
・自由研削砥石特別教育
・機械研削砥石特別教育
・動力プレスの金型交換特別教育


普通旋盤作業の検定試験に向けてトレーニングを積みます


普通旋盤作業の検定試験課題
繰り返し練習を積むことで精度を上げていきます


 担当の方にお話を伺うと、あえて“実際に見ながら行う加工”を重視し、前半は手動の汎用機を使って実習を行うそうです。「プログラム制御を行う最新のNC旋盤やマシニングセンターでは、安全性などの観点から加工部分がカバーされており、中の様子が見えづらくなっています。そのため、機械エンジニア科の訓練では、材料に刃物を当てる感覚や音を体で感じてもらうことを大切にしているんです。」と語ってくださいました。こうした工夫が、機械加工の本質を理解する上で大きな意味を持つのだと感じました。



訓練課主任専門員の廣瀬さん


 「資格を取得すること自体も重要ですが、その過程で行う反復練習にも意義があります。何度も繰り返し技術練習を行うことで、感覚が自分のものになり、自然に身体にしみ込んでいくのです。これは、幼い頃に何度も転びながら自転車の乗り方を覚えた経験と似ているかもしれません。たとえしばらく離れていても、自然と体が動く。そのために同じ作業を繰り返しトレーニングし、一歩ずつ着実にステップアップできる設備とカリキュラム、環境がこの施設には備わっています。」と話す廣瀬さん。


企業との連携により相思相愛の就職をめざす

 「モノづくり王国」とも称される愛知県ならではの恩恵もあります。愛知県に集結する、日本屈指の製造業関連企業の出身者や現役のエンジニアたちが、外部講師として指導にあたります。
 長年培ってきた匠の技能・技術や、研さんを積んできた現場での対応力、豊富な経験や事例などを大先輩たちが訓練生へ直接伝授。生きた情報に触れ、社会ですぐに役立つ実践感覚を養えることは、訓練生にとって貴重な財産になるでしょう。
 名古屋高等技術専門校の修了生に対する企業側からのニーズは高く、校全体の就職率は例年9割超え。機械エンジニア科の修了生については、令和6年度は就職率100%を達成しました。
 廣瀬さんによると「従来の自動車関連企業からの求人に加え、近年は機械設備のメンテナンス関連など、就職先の領域も広がりを見せています。」とのこと。また、ハローワークの求人に加え、名古屋高等技術専門校独自の求人もあり、幅広い選択肢の中から志望先を絞り込むことができるのも利点の一つです。


修了生の声


 エンターテインメント業界からの転職を考え、機械加工の基礎から一通り学べる名古屋高等技術専門校の機械エンジニア科へ入校。現在の勤務先では、NC旋盤による機械加工を担当しており、専門校で普通旋盤による基本加工を習得していたことが、今の仕事のベースとして活かされていると実感します。 
 また、現在の担当業務の大半がオーダーメイド加工なので、新しい図面を目にする機会が多々あります。その際、機械製図の訓練で習得した図面の見方が非常に役立っています。
 日々業務にあたる中で感じることは、モノづくりの奥深さです。専門校で学んだ基盤の上に、今後は、実際の現場で向き合う経験の一つひとつを糧として、地道にスキルアップしていきたいと考えています。


事業者の声(有限会社市来機械)

 当社の場合、採用後にモノづくりの基礎から教育するノウハウも余裕もないというのが現状です。しかし、機械加工業務を例に見ても、名古屋高等技術専門校の修了生であれば測定ができ、図面を読むというスキルを身に付けているため、現場を安心して任せられます。
 専門校で学びに専念し、基本的な部分を身に付けてから働き始めることは、決して遠回りではありません。本人は自信を持って仕事に臨めますし、将来を見据えた時には企業側にとってもメリットが多いと感じます。
 専門校には引き続き、次世代のモノづくり技術者を輩出し、製造業の業界全体を支えていっていただきたいと強く願います。


 名古屋高等技術専門校では、就職サポートの一環としてインターンシップや就労型企業実習を実施。企業との連携によって、入社前に職場の雰囲気を体感できる機会を積極的に設けています。
 廣瀬さんは「当校の最大の目的は、訓練生が就職できるように導き、長く幸せに働ける職場へと送り出すことです。訓練生、企業双方にとって、入社後のミスマッチを避けるためにも、互いに納得した上で送り出したいというのが願い。訓練生一人ひとりの状況に合わせてきめ細かくサポートしています。」と訓練生が希望する就職に向け、心を配っています。


令和8年度から「モノづくり機械科」へリニューアル

 機械エンジニア科は令和8年度、「モノづくり機械科」としてリニューアルします。企業からの要望や期待に応え、デジタル対応の授業内容を充実。マシニングセンター、NC旋盤、CAD/CAMを使ったNC加工実習などの時間を従来のカリキュラムから1.5倍に増やし、即戦力となる人材育成をより強化します。


小型マシニングセンター


NC旋盤



 さらに、モノづくりの喜びや楽しみをより体感できるように、機械設計や加工技術を活用して身近なアイテムを作る総合実習の時間などを増やす計画です。


総合実習では首振りエンジン駆動扇風機や缶バッジ成形機、
アルコール消毒用のディスペンサーなど実用的な物を製作


 コンピューターを活用したスキルの強化に加え、クリエイティブな心も育む新たなカリキュラムに、さらなる即戦力人材の輩出へ期待が膨らみます。
 お話の最後に、廣瀬さんからは「モノづくりに興味がある人にとっては、実践を通して手に職をつけることができる絶好の環境だと思います。モノづくりの楽しさを感じ、自信を持って社会へ羽ばたいていってほしいです。」と熱いメッセージをいただきました。



DATA


愛知県立名古屋高等技術専門校
所在地:名古屋市北区安井二丁目4番48号
電話:052-917-6711

 職業能力開発促進法に基づき、愛知県が設置・運営する職業能力開発施設。授業料は無料(※普通課程は年間授業料6万円)。実習重視のカリキュラム、資格取得に向けた支援、手厚い就職サポートを特色として、就職に役立つ職業スキルや知識の習得、ならびに希望する職業やキャリアアップへと導きます。
 また近年は、オーダーメイド型スキルアップ講座の受け入れにも積極的に対応。各種団体や個々の企業の要望に応じ、訓練内容、日程、講師を個別に設定して実施しています。

普通課程

2年コース
 組込みシステム科
 建築デザイン施工科
1年コース
 機械エンジニア科
 ※機械エンジニア科は令和8年度4月から「モノづくり機械科」としてリニューアル

短期課程

6か月コース
 インテリア科
 金属加工科
1年コース
 電気機器科
 総合造園科

知的障害者向け職業訓練

1年コース
 総合実務科

名古屋高等技術専門校 ホームページ

(令和7年7月取材)