中学生あつまれ!ミライに広がる進路講座


 「車の部品づくり」と聞くと、大きな機械を黙々と操作するイメージを持つ人が多いかもしれません。今回、車が好きで、部品づくりにも興味がある3人の生徒が選んだのは、GKNドライブラインジャパンでの職場体験でした。
 この会社が作っているのは、エンジンやモーターの力をタイヤに伝え、カーブを曲がるときに内側と外側のタイヤの回る速さを調整してくれる「駆動系部品」。普段目にすることはありませんが、車がスムーズに、そして安全に走るために欠かせない部品です。
 体験前、生徒たちが製造業に抱いていたイメージは「金属を熱で溶かしたり変形させたりして、別のものに作り変える仕事。」、「力仕事で大変そうだけど、ものを作るのは楽しそう。ただ、服が汚れてしまいそうなイメージもあった。」というもの。実際に工場に足を踏み入れると、そのイメージは大きく変わっていくことになります。


え、そうなの⁉ 知らなかった工場のヒミツ

 生徒たちが一番驚いたのは、検査で使う測定器の価格でした。「部品を測定する機械が想像以上に高額な設備だと知り、ものづくりの現場では高度な技術が使われていることに驚いた。」という声が上がりました。
 さらに、部品についた異物を調べる成分分析の技術にも目を輝かせていました。「物を置いてレーザーのようなものを当てるだけで、それが何の元素でできているのか一瞬でわかるのがすごいと思った。」と話す生徒も。
 働く環境についても、体験前のイメージは覆されたようです。「服が汚れるイメージがあったけれど、工場で働いている社員の方はみんなきれいだったし、工場内もきれいだった。」という声もあり、精密で最先端な現場の姿に、見方が変わっていったようです。



やればできる!   部品の組付け体験

 最初に挑戦したのは、電気を制御し、信号を送るための部品の組付け作業。社員の方によると、この工程は製品の性能を大きく左右する非常に重要な部分とのことです。
 なかでもギアの部品を組み付ける作業について、ある生徒は「社員の人には難しいよと言われたけれど、コツをつかんで結構スムーズにできた。」と、手応えを感じていた様子。そして別の生徒も「組付けの作業は、もっと複雑で、長い年月をかけて覚えるものだと思っていた。でも、中学生の自分でもやってみるとすぐにできた。」と、想像と違う"手が届く感覚"に驚いていました。
 もちろん、うまくいかないこともありました。「ギザギザの歯がついた部品を、同じ形の溝にかみ合わせて組み込む作業は、思っていたよりも難しかった。」という声もあり、単純そうに見える作業にも、コツと集中力が必要なことを実感したようです。





悔しさをバネに ボルト早締めチャレンジ

 続いてはノギスという測定器を使い、部品の外径を測定する作業を体験しました。「部品の4カ所を測定したが、初めての作業にもかかわらず、4つのうち2つが正解の数値ぴったりで、社員の方にも褒められた」といううれしい報告もありました。




 次に取り組んだのはボルトの早締めです。工具の使い方を教わったあと、挑戦しました。「ボルトを締めるタイムがあまりよくなくて悔しかった。自分ではもっと早くできると思っていた。」と本音をこぼした生徒。それを見ていた社員の方はこう声をかけてくれました。「作業が早いのはいいことだよ。製品を早く作れるということだからね。でも、早いのと焦るのとは違う。焦るとけがをしてしまうから、自分の一番いいペースでやることが大切だよ。」
 うまくいった達成感と、うまくいかない悔しさの両方を味わった体験になったようです。




まるでゲーム⁉   最新測定機に挑戦




 三次元測定機(物体の縦・横・高さの位置座標を読み取り、寸法や形を測る装置)の使い方についても説明を受けました。操作方法はクレーンゲームのようにスティックを動かす方式で、社員の方も「初めて操作したときはゲームみたいだと思った。」と話していました。複雑な形状の部品も一瞬で高い精度で測定できる性能に、生徒たちは目を丸くしていました。



 持ち運びできるハンディタイプの三次元測定機も使い、部品の長さや外径を測る体験もしましたが、「測定器の先端を、部品の面に対してまっすぐぴったり当てるのが難しかった。少しでも傾くと正確に測れないので、そこが大変だった。」と、繊細な作業に苦戦する場面もありました。



体験を終えて

 「何もかも知らないことだらけで、新しい感覚を味わっているようで楽しかった。工場の中で組付け作業をしたり、電動ドライバーでボルトを締めたりするのが楽しかった。」と体験の充実感を語ってくれました。
 体験前は漠然としたイメージしかなかった製造業の仕事も、実際に手を動かしてみることで、その奥深さと面白さが見えてきたようです。 「車関係の仕事により就きたくなった。」、「車づくり、部品づくりがしたいという気持ちがまた強くなった。」と話す生徒もおり、この1日の体験が、将来の夢をより具体的なものへと近づけるきっかけになったようでした。


働く人の声  GKNドライブラインジャパン株式会社 製造課 溝田 涼介  さん



Q. この仕事のやりがいは?
 車の部品を組み立てているときにもやりがいを感じますが、それ以上に、職場でやりにくかった作業を工夫して改善できたときに、まわりの人から「やりやすくなったよ、ありがとう。」と言ってもらえることが、一番のやりがいです。

Q. ものづくりの仕事を目指す中学生へ
 私が担当しているのは、車の部品を組み立てる作業です。部品を1つでも取り付け忘れたり、逆に多く取り付けてしまったりすると、それを使うお客様がケガをしたり、命に関わってしまうこともあります。だからこそ、毎日ミスのない製品を作り、お客様に安心して使ってもらえるよう努力する姿勢が大切なことを理解してほしいです。


働く人の声  安全・品管課 内山 颯太  さん



Q. この仕事のやりがいは?
 私は製品の品質をチェックする部署で、主に部品の測定や不具合が起きたときの対応をしています。不具合の原因を突き止めて、それがお客様のもとに届く前に防げたときは、大きな達成感があります。

Q. 大変なことは?
 不具合の原因を調べるときは、いろいろな角度から考えて調査を進める必要があり、時間がかかって大変だと感じます。

Q. ものづくりの仕事を目指す中学生へ
 配属される部署によって仕事の内容はさまざまですが、学校で学んだことが役立つ場面がたくさんあります。特に工業高校で学ぶ内容は、製造業の仕事に直結することが多いので、ぜひ学業もがんばってください。


この仕事を目指すなら



こんな人に向いている ものづくりや組み立てが好きな人、集中力がある人、車や機械が好きな人。
製品の品質をチェックする仕事は、決められたルール(図面)どおりにできているかを厳しく見極める仕事
なので、周りの意見に流されず、自分の判断に自信を持って取り組める人が向いているとのこと。
進路のルート例 工業高校に進学すると、ものづくりについて学べるほか、いろいろな設備や道具、資格についても学べる。
工業高校や高校の普通科を卒業して入社する人が多いですが、大学卒業後に入社する人もいて、
どんなルートからでも目指せる。
必要な資格 資格がなくても働けるが、製品の品質を守るための知識を学ぶ「QC検定」や工場で使うロボットの知識を
学ぶ「ロボット検定」などを取得すると、職場の課題解決や自分の成長につながる。
入社後に、フォークリフトの免許などを取得できる機会もあるとのこと。

取材にご協力いただいた企業  GKNドライブラインジャパン株式会社 名古屋事業所常滑工場



 「GKNドライブラインジャパン株式会社」は、アメリカ・デトロイトに本社を置く自動車部品メーカー「DAUCH Corporation」の日本法人です。世界24の国と地域で事業を展開しており、世界の主要自動車メーカーに駆動系部品を供給しています。市場に出ている車の半数に同社の製品が搭載されています。
 今回訪れた常滑工場は、中部国際空港のすぐそばにある工場です。ここでは、車の「動く」をコントロールし伝達する、さまざまな機能部品の製造、検査を行っています。


(令和8年8月取材)


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