看護科
最短5年で看護師へ!
心育む教育でエキスパートを養成
「将来は困っている人を助ける仕事がしたい」、「専門的な技術を身につけたい」。そんな思いを抱く中学生のみなさんにとって、選択肢の一つになるのが看護師ではないでしょうか。
愛知県内には、高等学校教育課程にあたる衛生看護科3年と、専攻科2年の5年一貫教育により、看護師の国家試験受験資格を最短で得ることができる高校があります。
今回はその中の一校、大府市にある愛知県立桃陵(とうりょう)高等学校の看護科をクローズアップ。衛生看護科を有する高校として、全国で2番目に古い歴史を持ちながらも、テクノロジーを取り入れた次世代型の学びを積極的に取り入れる桃陵高校。未来のエキスパートを育成する衛生看護科と専攻科の授業風景や学校の様子を通して、学校の魅力をレポートします。
夢まで一直線! 切れ目のない「一貫教育」の強み
看護師になるためには、看護師の国家試験に合格する必要があります。国家試験の受験資格を得るための一般的なルートとして、高等学校で3年間学んだ後、看護専門学校で3年間、もしくは看護系の大学で4年間学び、規定の課程を卒業・修了する必要があります。
対して衛生看護科を設置する高校では、高校3年間にあたる本科とその後2年間の専攻科を合わせた一貫教育により、5年間という最も短い期間で看護師国家試験の受験資格を得ることができる点が最大の特徴です。
また、入試のストレスから解放され、学びに専念できる点もメリットです。通常、高校卒業後に大学や専門学校をめざす場合、高校3年生の時は受験対策に時間を割く必要があります。しかし5年一貫教育の場合、高校課程での学びの後、専攻科へ進む際の入学試験はありません。そのため、本来であれば受験勉強に追われる時間を、看護の学習や実習、あるいは自分自身の成長のためにじっくりと使うことができます。加えて高校卒業後、進学先での環境変化によるストレスがないというプラス要素も挙げられます。
愛知県立桃陵高等学校
一人ひとりに寄り添う個別指導で国家試験合格へ導く
衛生看護科を設置する桃陵高等学校では、基本的に、5年間継続して同じ教師陣が指導にあたります。高校入学時からずっと見守ってもらえるため、一人ひとりの特性や資質を的確に把握しながら、それぞれに合った教育が可能です。
また学習面では、苦手なポイントにスポットを当てたきめ細かな個別指導を行うなど、国家試験合格へ向けた手厚いサポート体制で対応。看護師の国家試験合格率は例年90~100%と高い水準を誇ります。
桃陵高校 牧野 雅美 校長
5年一貫教育の意義について、牧野雅美校長は「5年間かけて“相手を思いやる心”をじっくり育てます。そのため、現場に出て厳しい状況に直面しても志を見失わず、看護師としてのやりがいを見出して働き続ける力が備わります。」といいます。そして、「看護を目指す子どもたちには、誇りをもって自分の役割を果たし、優しくて、美しい心を持ち、誰からも信頼される大人に育ってほしい。」と、看護教育への熱い思いも語ってくださいました。
VRやシミュレータを駆使!先端「DXハイスクール」としての挑戦
校内での演習と、病院や福祉施設など実際の現場での実習とを組み合わせた、実践的な教育活動をモットーとする桃陵高校。令和6年度には、文部科学省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)※1」に採択されたことを機に、近年はICT機器の活用によるリアルな学びと、知識や技術をアップデートするために求められる“学び続ける力”を養っています。
※1)高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)…情報、数学などの教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICTを活用した文理横断的な探究的な学びを強化する学校などに対して、そうした取組に必要な環境整備の経費を文部科学省が主導して支援する仕組み。
VRで看護師の視点を疑似体験
衛生看護科1年生では、VRゴーグル(専用のゴーグルを装着して仮想的な空間を疑似体験できる機器)を使い、実際の看護師の視点を通して病室を観察します。例えば、手術後の患者さんの病室でナースコールが鳴った際、「まず何を確認するべきか」、「スリッパの置き場所が転倒の危険につながらないか」といった判断力や危険予知を、リアリティを持って鍛えます。
VRゴーグルを活用した授業では 看護師と患者双方の視点から
望ましい療養環境について考えます
VRゴーグルに映し出されている映像は教室のモニターでも確認できます
授業を終えた生徒からは「実際の現場で行う実習の前に、入院している患者さんがどんな時に苦痛を感じるのかを知ることができて良かった。」、「患者さんの表情や病棟の雰囲気を知ることができ、自信を持って実習に臨めそう。」などの声が聞かれました。
高度なシミュレータを活用した教育
専攻科2年生になると、大学病院でも導入されている小児や新生児のシミュレータを使い、心音や呼吸音を聴いて正常か異常かを聞き分けたり、泣いている子どものあやし方や声かけを考えながら練習したりします。自分の判断が客観的なデータと照らし合わせて妥当だったかを確かめることで、現場ですぐに活躍できる実践力を養います。
泣く機能を搭載した小児シミュレータを使い
心音や呼吸数の測定を実習
小児用の呼吸音聴診シミュレータに聴診器を当て
異常音の聞き分けを行います
教師がタブレットを使い
音の種類や発生場所を設定して音を流します
県下初!電子カルテの導入
令和8年度以降には電子カルテの導入も予定されています。ICT化が進む実際の医療現場で、卒業後すぐに円滑に勤務できる環境を整える取組は、愛知県内の5年一貫教育課程を行う高校として初となる先駆的な試みです。
「健康都市」という恵まれたフィールドで実践力を身につける
桃陵高校では、看護技術だけに留まらず、患者さんに寄り添う心のあり方を大切にしています。その一環として地域住民との関わり、地域の医療・福祉との接点にも重きを置いています。
牧野校長は「桃陵高校がある大府市は、市制施行時から『健康都市』を理想に掲げ、市内にはあいち健康の森公園や国立長寿医療研究センターなど保健・医療・福祉の充実を目指した施設が多数設置されています。このような地域性もあり、桃陵高校は、愛知県の地域医療を支える専門学科として地域からも期待されています。」と話します。
地域との深い絆
近隣小学校への「出前授業」で風邪予防に関する授業を行ったり(衛生看護科2年)、大府市主催の「健康福祉フェア」において健康講座や血圧測定を行ったり(専攻科1年)という活動を通して、地域の方と直接触れ合う機会を豊富に設けています。
また文化祭では、「健康教室」も実施しています。
地域の小学校で行う出前授業の風景
大府市健康福祉フェアでは
地域の方の血圧測定などを行いました
文化祭の健康教室の様子
充実した実習環境
実習先として、大学病院など18の医療施設と提携。名古屋市に近い立地や、健康都市を掲げる大府市に学校があることなどから、医療の最前線の現場で学ぶことができます。
資格は一生の財産に 未来へ広がる多彩な進路
歴史ある桃陵高校を巣立った卒業生・修了生は8,600名を超えています。各就職先の現場からは「桃陵高校出身者はひたむきに看護に取り組み、離職率が低く、長く活躍しています。」と高い評価の声が届き、中には、病院の副院長や看護部長など医療現場の重要な役職で活躍する先輩も大勢います。
また卒業後の進路は、病院への就職だけではありません。病気のために普段通っている保育園に行けない子どもを預かる病児保育、地域福祉、さらには国際ボランティアなど、看護の知識を活かせる場所は無限に広がっています。
専攻科卒業後、保健師や助産師を目指してさらに学びを広げることで、ダブルライセンスに挑戦する生徒もいます。4年制大学の3年生に編入し、養護教諭(保健室の先生)の免許を取得する道を選ぶ生徒もいます。
桃陵高校での学びをステップとして、さまざまなステージをめざすことができるのです。
【生徒の声】
衛生看護科3年 A・Kさん
看護師をめざすきっかけとなったのは、祖父の訪問看護に訪れていた看護師さんの姿でした。祖父や家族の不安を和らげてくださる優しい声かけ、祖父の生活の質が上がるような的確な援助、そして常に笑顔を絶やさない姿を見て、私も人の人生に関わり、支えていける存在になりたいと思うようになりました。
看護師になりたいという夢を叶えるために、いろいろな進学先を模索する中で、1年目から実習が充実している桃陵高校を志望しました。実習を始めたばかりの頃は、患者さんの体調の変化を把握することができず苦労しました。しかし、桃陵高校の授業で学んだアセスメント(※2)の大切さを改めて意識し、病気やけがの症状だけでなく、患者さんの生活背景や価値観を深く知るように心がけたところ、患者さんと心を通わせることができるようになりました。
これからは専攻科でさらに高度な知識と技術を身につけ、一人ひとりの方と心を通わせながらケアにあたることで、多くの方から信頼され、愛される看護師を目指して頑張ります。
※2)アセスメント…症状や検査結果などの情報を分析し、問題点の抽出や看護計画につなげるプロセスのこと。
専攻科2年 Y・Kさん
看護師という職業をはじめて意識したのは、中学1年生の頃。コロナ禍だった当時、テレビなどを通して懸命に人々の命を救う医療従事者の姿を目の当たりにし、心を動かされました。
専攻科に進んでからは、実習前後の提出物など、山積みの課題にくじけそうになることもありましたが、同じ志を持つ仲間の存在が大きな支えに。桃陵高校では、5年間同じクラスメイトと過ごすので、苦しみや達成感を分かち合い、励まし合うことで乗り越えることができます。
桃陵高校は、日々の学び一つひとつがすべて自分自身の力になっていると実感できるカリキュラムが魅力であり、看護師になる夢を最短で叶えることができる学校です。修了後は、患者さんの思いを尊重できる看護師になりたいです。そして、誰かの目標になれるような看護師をめざして歩んでいきます。
AIが進化する時代だからこそ、心身が弱っている人や不安を抱える人に“温かい手を差し伸べる”という心のこもったケアは、人間にしかできない大切な仕事としてますます求められることでしょう。
看護師という夢に直結する衛生看護科で、同じ志を持つ仲間と共に支え合いながら学ぶ経験は、一生の宝物になるはずです。自分自身の人生を豊かにし、誰かの幸せを支えるプロフェッショナルへの第一歩を踏み出してみませんか?
看護師としての決意と心構えを新たにする戴灯式(たいとうしき)の様子
DATA
愛知県立桃陵高等学校(大府市中央町五丁目15番地)
愛知県立桃陵高校は、知多半島北部の大府市にあります。昭和40年、愛知県立大府高等学校全日制課程の衛生看護科として2学級を設置し、全国2番目の衛生看護科を有する高校としてスタートを切りました。昭和43年に衛生看護科が独立し、愛知県立桃陵高校として開校。その後、昭和48年には看護師への完全教育をめざす専攻科1学級が設置され、平成14年4月に5年一貫教育の看護師養成課程となりました。平成21年4月には、介護や福祉を担う全日制課程ヒューマンケア科を設置。現在は、衛生看護科1クラスと2年課程である専攻科1クラスとあわせて、医療のプロフェッショナルを育てる学校として日々成長しています。
(令和8年7月取材)





