福祉科
実践的な介護の技術を学びながら
社会に役立つ「やりがい」「楽しさ」を実感!
中学生の皆さんは、「介護」に対してどんなイメージをお持ちですか?もしかしたら「よくわからない」、「なんだか大変そう」と思っている人も多いかもしれませんね。
そこで今回は、介護福祉業界で働くプロを育成するために設置された高等学校の「福祉科」をご紹介。現場で役立つ実践的な技術を身に付けながら、介護の仕事や人と接する「楽しさ」「やりがい」を実感できる福祉科の授業を取材させていただきました。
介護のプロフェッショナルを目指す
愛知県内の高校では、県立4校で福祉科を設置しています。
福祉科の最大の特徴は、介護専門職の国家資格である「介護福祉士」の資格取得を目指せることです。厚生労働省が定めるカリキュラムに基づき、3年間で455時間におよぶ校外介護実習を実施し、介護技術や福祉の専門知識を実践的に習得します。こうした学びと資格取得を通じて、福祉・医療分野への進路の実現を目指します。
1年生から3年生にかけて段階的に介護の専門科目が増え、さまざまな実習を重ねることで、介護現場で活躍するために必要な実践的スキルを幅広く習得できるのが魅力です。
ちなみに介護福祉士とは、国家資格として認められている介護専門職の資格のこと。多くの国では、介護職の資格は民間認定ですが、日本の介護福祉士は、世界的にも珍しい「国が定めた資格」として広く知られています。
卒業時に介護福祉士の受験資格が得られるのは、介護福祉士養成課程を設置している高校です。愛知県内では県立4校の福祉科のほか、総合学科でもこの養成課程を設置している学校があります。介護福祉士の資格取得を考えているなら、こうした養成課程のある学校を選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
愛知県立古知野高等学校
今回取材に伺ったのは、江南市にある愛知県立古知野高等学校福祉科です。平成9年4月に福祉科が設置され、令和7年度で29年目を迎えました。設置当初から専門的な介護の知識・技術を学ぶ場として、福祉分野の国家資格である介護福祉士の養成を行っています。同校では3年間で52日間の福祉施設などでの現場実習を行い、実践的な学びを深めています。
同校では、最先端のICTを活用した介護を実践的に学べる点が大きな特徴の一つです。令和7年度からアプリを活用した実習が本格的にスタートしました。スマートフォンを20台導入し、生徒たちは専用のアプリを使ってハンズフリーで音声入力する流れなどを実体験しています。
同校の実習先となる施設でも、こうした最新のアプリを活用しているところはまだ少数だそうですが、福祉科の髙木諒先生は、「介護人材が不足する中、今後はこうしたICTツールの導入が加速すると予想されます。そこで、生徒たちには最先端の技術にいち早く触れ、デジタルネイティブ世代の強みを活かしながら、現場への導入を自ら主導していけるような人になってほしいと考えています」と話していました。
大学教授を招いた講義で福祉の基礎を学習
今回は、そんな同校の福祉科の魅力を肌で感じるため、1、2年生の授業を見学させていただきました。
まずおじゃましたのは、2年生の「介護過程」の授業です。介護に関するさまざまなデータを分析して現場に活かす方法を学ぶため、同朋大学から講師2人を招き、リレー形式で授業を展開しています。
この日の授業では、介護福祉学や認知症ケアなどを研究する同大学の下山久之教授が登壇。「福祉ってなんだ?」というテーマで公開授業が行われ、平日に校外での学習活動を行える「ラーケーション」の制度を活用して見学に訪れた中学生親子の姿なども見られました。
ちなみに同校の福祉科では、定期的にこうした公開授業を行っているとのこと。興味のある中学生のみなさんは、ぜひラーケーションを利用して授業を見学してみてください。
福祉の基本的な考え方を指導する下山教授
講義内容をまとめた資料
授業では、「医療」「保健」「福祉」のそれぞれの基本的な考え方や違いなどを学んでいました。例えば、医療の提供を受ける人を「患者」と呼ぶのに対し、介護を受ける人は「利用者」と呼びます。これは、介護では対象者を管理するのではなく、生活の主体者である本人の意向を尊重するという考え方に基づくものです。生徒たちは、介護業界を目指すうえで重要となるこうした根本的な理念について、しっかりと理解を深めている様子でした。
ロールプレイ形式の実習で利用者衣服の着脱方法を習得
続いて、1年生の「生活支援技術」の科目で行われている「着脱実習」を見学しました。生徒が3~4名で1つのグループを組み、「介護者役」、「利用者役」、「手順の読み上げ役」に分かれ、現場で使われているのと同じ仕様の介護用ベッドを用いて、衣服の着脱を行うロールプレイ形式の実習が行われました。
利用者役の生徒の様子を見ながら、ベッドの角度などを細かく調整。「どうすれば少ない負担でスムーズに衣服の着脱ができるのか」を生徒たちが主体的に考え、先生はその様子を見守りながら、実践に即した着脱の仕方や注意点などを細かく指導していました。実技面だけでなく、利用者への声の掛け方など、具体的なコミュニケーション方法にも踏み込んで指導しているのが印象的でした。
実践で役立つ着脱方法を指導する髙木先生
着脱しやすい高さにベッドを調整
それぞれの役に分かれて着脱を行う生徒たち
着脱を終えた後は、介護の記録を音声入力することでPC入力の手間を省き、業務を効率化するためのアプリ「ハナスト」を使用。インカムを付けた生徒が、利用者の様子や業務内容などを話し、スマホ端末に記録を行っていました。なかには音声が認識されず利用者の名前が誤って記録されるなど、スムーズに記録ができない生徒もいましたが、先生の指導の下、音声入力する際の話し方のコツを徐々につかみ、授業が終わる頃には音声入力アプリの操作にもだいぶ慣れた様子でした。
音声入力アプリ「ハナスト」を起動し、インカムを付けた生徒が介護記録を入力
授業を受けた生徒たちは、「利用者さまの負担を減らすように着脱をしなければならず、それを考えてやるところが難しかったです。」と授業を振り返っていました。また、音声入力アプリについては、「メモを取るのに比べて作業が楽ですし、すぐに記録できるのがとても快適でした。」と、その利便性を肌で感じた様子でした。
また、福祉科の魅力についてたずねてみたところ、「利用者さんの生活を支え、お互いに幸せな気持ちになれる介護のやりがいをより深く知ることができるのがよいところです。」、「介護技術を学ぶ実技だけでなく、座学でコミュニケーションを学べる機会もあるので、自分の成長という点でも役立つのが魅力です。」といった声が上がっていました。
認知症カフェの運営などを通じて「課題解決力」を養う
同校の福祉科のもう一つの特徴が、「課題解決型学習」です。学習の一環として、生徒たちが主体的に「認知症カフェ」などの運営に関わることで、「課題解決力」や「協働する力」などを養います。令和6年度、同校がある江南市内で立ち上がった「認知症カフェ」の運営会議に参加し、カフェで実施されるプログラムの企画立案などを行っています。
校内で開催された認知症カフェの様子
「生徒たちの提案が思うように通らないところが、実は大事なんです。」と髙木先生は話します。「介護実習では、教員と受け入れ施設との間で綿密に準備を行うため、想定外の出来事が起こることはほとんどありません。一方で、認知症カフェなどの運営を通じて地域に出た時には、思うように意見が通らない場面もあります。そうした時に、どう工夫すれば実現できるのかを考える。一連のやり取りを通じてたくさんの学びを得てもらいたいと考えています。」
そのほかにも、生徒たちが動画を制作したり、介護職員のインタビューをしたりして介護・福祉の魅力を発信するほか、江南市の高齢者向けに介護予防や認知症予防のプログラムを考案する取り組みなども行っているそうです。
介護の魅力を発信する動画を撮影する生徒たち
考案した健康体操を高齢者と一緒に行う
卒業後は、大学・専門学校などに進学する生徒が5割以上。将来的には介護福祉士はもちろんのこと、社会福祉士、看護師、リハビリ職、さらには教員を目指す人などもいます。「福祉科を目指して進学してくれた生徒が多く、介護が好きで、全員が前向きに取り組んでくれているのがうれしいですね。」と髙木先生は話してくれました。
【先生からのメッセージ】 福祉科 主任 髙木 諒 さん
「ICTを活用した次世代の介護に触れ
幅広いスキルを磨いていける学校です」
私は本校の福祉科に来て8年目になります。私自身、本校の卒業生であり、平成18~20年にかけて福祉科で学んでいました。新卒から8年間、別の高校の福祉科で教えた後、慣れ親しんだ母校に戻ってきました。
中学生のみなさんのなかには、福祉に対して「大変な仕事」といったネガティブなイメージを抱く人もいるかもしれません。でも、そんなイメージを変えていけるのが、私たち福祉科の教員であり、ここで学んで社会に羽ばたいていく生徒のみなさんだと思っています。
本校では、最先端のICTを活用した次世代の介護を実践しています。きっとこれまでの介護のイメージが変わると思います。また、介護の世界で活躍できる力を養うだけでなく、異なる分野に進んだとしても役立つ幅広いスキルを磨いていけるのも本校の福祉科です。
これからの社会で生き抜く力を養いたいという人にとって、きっと魅力的な学びが得られる環境だと思います。『介護を通じてたくさんの人たちの暮らしを支え、社会に役立つ仕事がしたい』。そんな情熱を持った方にぜひ入学していただければと願っています。
DATA
愛知県立古知野高等学校(愛知県江南市古知野町高瀬1番地)
古知野高等学校全日制は、『地域ビジネス科』『ITビジネス科』『生活文化科』『福祉科』の4学科で構成されています。生徒一人ひとりの興味、関心、適性等に応じたキャリア教育を充実させ、進路実現に向けた学習を学科別でコースを設けて行っています。
同校の福祉科では、令和6、7年度に高校と産業界が一体となって次世代の地域産業を担う人材を育成する「マイスター・ハイスクール普及促進事業」の採択を受け、「DX時代をリードする高度介護人材の育成」をテーマに掲げた授業を展開してきました。
1年生では最新のICT・IoT技術を学び、2年生では施設見学などを通じてテクノロジーの活用力を養成。そして集大成となる3年生では、介護実習の場でICTを実践的に活用し、介護計画に活かす力の習得を目指しています。
愛知県立古知野高等学校 ホームページ 愛知県立古知野高等学校福祉科 インスタグラム
(令和7年12月取材)





