農業高校
農業の未来を元気にしよう
〜生命あるものを育て、活用する学び〜
お米や野菜、ウシやブタ、草花や森林・・・。農業高校は、こうした命あるものの育て方、その恵みの活用の仕方を経験から学んでいく学校です。
美味しい食事を楽しむことが、美しい景色を楽しむことが、これからも当たり前の社会であるように。元気な未来を育てる道を農業高校で目指してみませんか?
これからの農業を考える学び『課題研究』
農業高校の役割は、農業や農業関連産業を通して、地域や社会の持続的な発展を担う人材の育成です。そのために農業高校では昔から、生徒が主体的そして探究的に学ぶプロジェクト学習が根付いており、それが今でいう『課題研究』の学びであり、農業高校が力を注いでいる授業の一つです。
『課題研究』では、生産性や品質の向上はもちろん、食品ロスの削減、環境負荷の低減など、さまざまな課題を抱える農業分野で、生徒一人ひとりが関心のあるテーマを選択して研究を重ねたり、地域の課題解決に向かって地域と連携して取り組んだりと、生徒が学び、考え、導き出したことを実践しています。
【課題研究のテーマ(安城農林高校の一例)】
・ブドウの長期鮮度保持に関する研究
(冷蔵庫で鮮度を長期間保つための保存方法を検証)
・さし木用土によるアジサイの生育の違い
(アジサイの枝を切って6種類の土にさし、根が出るか、生育の違いを検証)
・木と枝を活用したファッションショー
愛知県立安城農林高等学校
課題研究から発展『プロジェクト活動』
訪問した『愛知県立安城農林高等学校』では、課題研究をきっかけにスタートしたプロジェクトが現在も進行中。その一つが、園芸科の生徒による『土壌生物利用による循環型農業の研究』です。
プロジェクトに取り組む「土壌研究研修班」の生徒
当初は、ミニトマトの水耕栽培で収穫後に残る根を有効活用するために、有機物の分解を得意とするシマミミズにそれらを与え、発生するフンを肥料として利用する研究を園芸科の生徒が行っていました。ミミズは、根に付着した化学肥料に含まれる貴重なリン酸などの資源の循環利用に活用できることがわかったそうです。
残さ(ざんさ)を利用する研究は園芸科土壌研究研修班の後輩に受け継がれ、令和6年から、廃棄されるトマトの茎や葉をブラックソルジャーフライ(アメリカミズアブ)のエサに変え、その幼虫を魚に食べさせ、魚のフンを肥料として活用しようという研究に本格的に取り組んでいます。
また、園芸科の施設野菜の生産を学ぶコースと連携し、ミニトマトの生産方法の見直しや販売ルートの開拓、規格外品を利用したメニュー開発などに取り組み、生産量を約2倍に、そして廃棄量を7割減らすことに成功しました。
水耕栽培から出たトマトの農業廃棄物
(茎や葉)
トマトの残さを与えたブラックソルジャーフライを魚のエサとして利用し
魚のフンを肥料として実際に野菜が成長するか検証中
こうした研究の成果は、SDGsをテーマにした企業や大学のイベントで発表しています。生徒の一人は「発表の場では、さまざまなプロジェクトに取り組んでいる人との出会いによって、幅広い考え方に触れられることが刺激になります」と話していました。
令和6年11月に開催された「第4回 Green Blue Education
Forumプレゼンコンクール」で環境大臣賞を受賞
「研究は地道な観察の積み重ねが必要で、発表内容の10倍くらい観察をしなければならない。観察したうちの1割くらい発表できる内容が見つかればいいほうだ」と顧問の先生はおっしゃっていました。大変な苦労があるプロジェクト活動ですが、社会的に関心の高いテーマに取り組んでいることが、生徒の研究意欲につながっているようです。
もう一つの代表的な活動である『プロジェクトBee』は、ニホンミツバチの保護を目的とした養蜂活動がきっかけで始動。当初はフラワーサイエンス科の課題研究の一つでしたが、今では学科の枠を越えた活動になっています。
『プロジェクトBee』に参加する生徒
活動内容は、生態研究やニホンミツバチを引き寄せるランの開発、巣箱の研究など。この他、ハチミツを利用した商品開発に加え、ハチミツ酵母を利用したパンやビールなどの開発を企業と連携して行っています。日頃の活動成果は、令和5年度消費者支援功労者表彰において、愛知県が推薦する団体としては初めて、最高賞である内閣総理大臣表彰を受賞するなど高い評価を受けています。
安城農林高校では、他にも学科での学びを活かしたプロジェクトが進んでおり、県内の他の農業高校でも、それぞれで地域色を反映した研究を行っています。
ハチミツ採取作業
花の専門学科『フラワーサイエンス科』
安城農林高校では、草花を増やし、育て、活かす力を身につける『花の専門学科』を単独学科として設置していることが特徴の一つです。この学科には、切り花、小鉢、ラン、花木の栽培技術を学ぶコースと、植物バイオテクノロジーの技術によって主にランや観葉植物の組織培養技術を学ぶコースがあり、そのためのクリーンルームも設置されています。
寄せ植え実習
花木の栽培実習
クリーンルームでの『植物バイオテクノロジーの実習』
培養した植物体を分解して再度増殖させたり、植物体の再形成のために株分けしたりしている
また、フラワーアレンジメントやガーデニングなどの園芸デザインを学ぶ授業に力を入れているのも特徴で、フラワー装飾の資格取得や大会への出場を目指す生徒もいます。
放課後に学校へおじゃますると、若者たちが技能の日本一を競う『技能五輪全国大会』の『フラワー装飾職種』に出場する生徒たちが、大会に向けた追い込み練習をしていました。
技能五輪全国大会に向けて練習に励む生徒
これまで取り組んできた感想を伺うと「資格取得に向けて努力を続けたことで、精神的に成長できました」(大橋彩心さん)。「それぞれの花を生かしながら、自分の思い描くカタチにすることが楽しいです」(岩田遥菜さん)とのこと。『全国高校生フラワーアレンジメントコンテスト』で審査員奨励賞を受賞した大川愛可さんは「審査員の方、来場者の方から作品をほめていただき、賞をいただけたことが自信になりました」と話します。3人が大会の課題に沿った自分の世界観を表現しながらアレンジメントの練習に取り組む姿はとても印象的でした。
大会当日に課題が発表される「サプライズ課題」の練習
制限時間は80分 その場で花材や資材が支給されるためアイデアの引き出しの多さや瞬発的な発想力が必要とされる
この日の練習テーマは「クリスマス」
動物のスペシャリストを育成『動物科学科』
『動物科学科』は、鶏や豚、牛(乳牛)、ウサギ、モルモットなど、さまざまな動物の飼育管理を学ぶ学科です。独立した学科であり、飼育している動物の種類、頭数も充実していることに魅力を感じ、一宮や豊橋などの遠方から通学している生徒もいます。授業前や放課後には、1年生から3年生までが協力して動物の餌やりやフンを取り除く作業などを当番制で行っています。
指導にあたる先生は「動物の飼育・管理を通して、命の大切さ、そして責任感を養ってほしい」と話します。
また、同科では、愛玩動物飼養管理士や実験動物技術者の資格取得に向け、外部講師による実技指導も行っています。
【先生からのメッセージ】 教頭 三橋 一史さん
「育てる経験を重ねながら技術と心を磨こう」
農業高校とは、生命あるものを育てる経験を積む中で、必要な知識や技術を学んでいく学校です。育てるものは、お米や野菜、果樹、草花、動物、森林など、学科によって様々です。
県内にある農業高校では地域の特産物に合わせたカリキュラムを組んでいるので、学科名が同じであっても、学びの内容が異なるため、自分の興味に合った高校・学科を選ぶことが大切です。また、授業以外の時間や夏休み、冬休みでも生徒が交代で世話をしなければなりませんが、 農業高校は、興味、関心、やる気があれば、どんなことにもチャレンジできます。
生命と向き合い、地道に取り組む姿勢は、人としての成長にもつながります。
DATA
愛知県立安城農林高等学校
(安城市池浦町茶筅木1番地)
『農業科』『園芸科』『フラワーサイエンス科』『食品科学科』『森林環境科』『動物科学科』の幅広い学科構成が特徴。現在は、生徒の約6割が就職、約4割が進学です。
生徒が栽培・飼育した農産物を直接販売する『安農マーケット』は地元の方に好評。地域に貢献できる学校を目指し、積極的な交流活動も展開。
園芸科は安城産業文化公園デンパーク内にあるデンパーク農場の管理や体験イベントの開催、フラワーサイエンス科は市役所の正月飾りや市民会館の花壇づくりなどにも参加。
また、農業クラブ(※)の活動においても優秀な成績を残しています。
※農業クラブとは
農業高校で学ぶ生徒は、『日本学校農業クラブ連盟』に所属するクラブ員になります。日頃の学びの成果を披露する農業鑑定競技会や家畜審査協議会、平板測量競技会、プロジェクト発表会などの活動を行っています。
【余談ですが…】
安城農林高校の『文化祭』
毎年、学習の成果である農産物の販売や課題研究の中間発表などが行われています。今年は生徒の保護者のみの参加(コロナ禍以前は一般公開)でしたが、開始時間前から長蛇の列。生徒たちが育てた果物や鶏の卵のほか、ケチャップやジャムなどの加工品の販売ブースには多くの人が詰めかけ、すぐに売り切れてしまうほどの大盛況ぶりでした。
学科ごとに掲示された課題研究(中間発表)
生徒が養蜂したニホンミツバチのハチミツ
年に1度しか採れず量も少ないため希少
ハチミツの販売ブースは毎年販売前から長蛇の列
ようやく今年購入できたという人もいた
食品科学科の生徒が製造したケチャップといちごジャム こちらの販売ブースも大盛況
飼育する名古屋コーチンや岡崎のブランド鶏「岡崎おうはん」や割れたトマトを飼料に利用した「トマシegg」を販売
生徒が作ったテーブルやイスなどの木工製品も販売
「造りがしっかりしている」とできばえを絶賛し熱心に品定めするお客さんもいた
(令和6年11月取材)





