中学生あつまれ!ミライに広がる進路講座

工科高校には、ワクワクがいっぱい
〜モノづくりを学んで 思い描く未来をつくろう〜​

 『社会をもっと便利にしたい』、『もっと快適にしたい』。社会の発展を支えてきたのは、モノづくりに携わる人たちの、そんな情熱。モノづくりに興味がある、あなた!工科高校を進路の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
 工科高校の役割は、地域や日本の産業の未来を担っていく人材、技術を通して地域社会の発展に貢献できる人材の育成です。あなたなら、どんな夢を未来に思い描きますか?
 モノづくり王国・愛知で、ますます期待が高まる工科高校をご紹介します。


工学と科学を融合 
県立の工業高校は『工科高校』へ


 令和3年4月、愛知県内の県立工業高校は、『工科高校』に名称が変更されました。その背景にあるのは、社会のデジタル化、高度化がどんどん進むことによる、産業界が求める人材ニーズの変化です。それにより産業界では、実習によるモノづくりの知識や技術の習得に加え、数学や理科についてもしっかり学び、科学的な根拠に基づいて課題を解決する力を身につけた人材が必要とされる時代になってきています。
 名称の変更とともに、学科・コースの新設なども行われました。理数工学に関する学びを深める学科として誕生した『理工科』。デジタル化の象徴的な学科は、『IT工学科』と『ロボット工学科』です。『IT工学科』では、自動運転技術を題材に情報処理技術を習得。高齢者が利用するシニアカーに多数のセンサーを搭載し、自動運転を行う実習を行っています。『ロボット工学科』では、製造技術はもちろん、ロボットを生産現場で効率的に活用するための学習も取り入れています。『ロボット工学科』の数が大幅に拡充されたのは、愛知県はロボット製造の事業所数が全国1位という背景もあるそうです。
 また、理工系分野での女性の活躍促進は、社会的な課題の一つ。そこで、環境に配慮した工業製品の品質保証や試験・分析についての知識を身につける『環境科学科』や、工業分野の学びに加えて、家庭科などの生活関連科目に関する学習やものづくり企業で活躍する女性による講演などを充実させた『生活コース』を新設し、企業で活躍できる女性人材や男女共同参画(性別にかかわらず、みんなが自分の個性と能力を発揮し、喜びや責任を分かち合うこと)を促進する人材の育成に力を入れています。


愛知県立愛知総合工科高等学校



8割が進学 県内唯一の『理工科』



 今回、伺った『愛知県立愛知総合工科高等学校』は、県内で唯一の『理工科』を有する高校です。この科を選択する生徒のほとんどは理工系大学への進学をめざしています。進学率は約8割で、名古屋大学や名古屋工業大学など、国公立大学への進学実績があります。大学進学をめざすコースのため、他の学科に比べ、数学や物理、英語などの授業数が多いそうです。
 理工科の教諭 櫛田真一郎さんは、「理学と工学を融合させた学び、自分で課題を持って探究する学びを軸にして授業を進めている。将来はモノづくり企業の技術開発者や研究者となる人材の育成を目指している」と話していました。


トライ&エラーから課題解決力を養う『課題研究』


 理工科が力を注いでいる授業の一つが『課題研究』です。この『課題研究』は、愛知県立の工科高校共通の特徴的な授業で、自分たちで設定した様々なテーマで1年かけてモノづくりを行います。
 理工科の場合は、2年生から『課題研究』をスタート。機械、電気、情報、化学の4分野のゼミに分かれ、生徒一人ひとりがテーマを決めて取り組んでいるそうです。(他の学科では3年生からグループ単位で課題に取り組みます)。  
 櫛田さんは、「課題研究は、自分の興味があること、掘り下げて学びたいことを研究する授業。仮説を立てて実際にモノをつくり、実験し、検証していく中で、理論を身につけることを目指します」と話します。 




研究テーマは 自転車にエンジンとモーターを搭載して走らせる
『小出力のハイブリッド開発』




『カエルのような跳躍運動をする ロボット』を
研究する生徒たち



3Dプリンターでロボットを作るため
カエルを解剖して骨格の標本も製作



引地 尊さん(理工科3年生)


 生徒の一人、引地尊さん(理工科3年生)は、小学生の頃から野球をやっていたこともあり、『イレギュラーボール』の研究を始めました。当初は、イレギュラーが起こる原因を考え、発生する確率などを探ろうとしましたが、変数が無数にあり、因果関係を明らかにすることは困難であると判断。いつ起こるかわからないイレギュラーボールをキャッチできるようになる練習ボールの開発をしようと視点を変更。

 
 ボールにさまざまな突起を付けたり、重心を変えるなどの試行錯誤を繰り返し、現在のボールの形状にたどりついたそうです。
 引地さんは「失敗を繰り返す中、幅広く発想し、検証していくことができるようになりました。いろいろな視点からアプローチできるようになったことに成長を感じています」と話していました。



市販のボールに突起物を付けた練習ボール



学びをさらに深める部活動



 工科高校で学ぶ生徒のモチベーションになっていることの一つが、様々な競技大会に参加することです。『ロボットコンテスト』が知られていますが、それ以外に、『ものづくりコンテスト』という、各学科の学習内容にあった競技(旋盤、溶接、自動車整備、電気工事、電子回路組立、化学分析、木材加工、測量)があります。こうしたコンテストに参加するために、生徒は部活動で技能を磨き、県予選、東海大会、全国大会への出場を目指します。
 今回、部活動の中から『機械技術部』に注目。おじゃましたときは、全国の高校生が参加するロボット大会に向けて製作したロボットの調整中でした。この機械技術部は、旋盤・フライス盤・溶接・CAD・ロボットの5つのグループにわかれ、技能検定やものづくりコンテストなどに向けて取り組んでいる部活動です。






山本 裕秋さん(機械加工科3年生)


 

 部員の山本裕秋さん(機械加工科3年生)は、「ロボット製作に5~6か月かかりましたが、みんなで意見を出し合い、完成をめざしていくことが楽しいです。また、部活動で資格取得に向けた練習時間が多く取れたので、技能検定に合格することができました」と話します。



 ちなみに機械技術部の溶接グループは、ものづくりコンテストの『溶接作業部門』で全国2連覇中。3連覇をめざして練習に励んでいるそうです。


溶接競技大会の受賞作品





企業と連携したキャリア教育も充実


 現在、工科高校が積極的に取り組んでいることは企業との連携です。愛知総合工科高校では、キャリア教育の一環として『キャリアデザインプログラム』を開催。毎月、企業や大学の人を招き、講演会を行っています。生徒にとっては、業界の現状や今後の動向について理解を深めるとともに、企業経営者や現場の技術者と直接交流ができる貴重な機会になっているとのこと。
 また、インターンシップを積極的に行っており、生徒が自分の進路選択を考える一助になっているそうです。


【先生からのメッセージ】 教頭 古橋 信二さん

「よりよい社会をつくる一員をめざそう」

 モノづくりに関心のある人たちにとって工科高校は、体験型の教育を受けることで、学びを深めていくことのできる学校です。
まずはそれぞれの学びの中から『好きなこと』を見つけ、進路を選択してください。そして将来は、よりよい社会をつくるため
に活躍できる人になってほしいと思います。


DATA

愛知県立愛知総合工科高等学校
(名古屋市千種区星が丘山手107)


 愛知県におけるモノづくり人材育成の中核拠点として平成28年に設立。『理工科』『機械加工科』『機械制御科』『電気科』『電子情報科』『建設科』『デザイン工学科』の7科編成。生徒の約6割が進学。就職内定率は100%です。
 また、校内の設備は全国屈指の充実度を誇り、旋盤は、技能五輪全国大会の会場となるほど。高校生ものづくりコンテストや総合競技大会でも各科の生徒が優秀な成績を残しています。資格取得では、建設科の在校生が測量士の国家資格に最年少合格し注目を集めました。
 さらに高度な技術・技能を習得するため5年間一貫した教育を受けることも可能な『専攻科(2学年制)』も併設しています。



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