商業高校
今、商業高校が面白い
〜生きたビジネスを感じながら、未来の自分を探そう〜
「商業高校って何を学ぶの?」。
簿記や会計、情報処理について学び、資格を取得して就職につなげる。そんなイメージは、ほんの一面にしかすぎません。今はどんどん学び方、学びの内容が多様化し、大学や専門学校へ進学する生徒も増加傾向にあるそうです。そこで、今回は商業高校のリアルな姿をのぞいてみることにしました。
知識を覚えるだけが勉強じゃない
今、探究型・体験型の学びへ
商業高校では、普通科の高校と同じ、国語・数学・英語などの共通科目に加え、流通の仕組みやマーケティング、簿記、ITビジネスなど商業に関する専門科目を学びます。この商業高校ならではの科目は、全体の授業の約3分の1ということです。
こうした中で商業高校の大きな変化は、知識を覚える学びから、知識を活かす学び、自分の考えをどう表現するか、行動するかという学びに重点をシフトしていること。そして学びの舞台は、学外にも広がり、地域や企業とのつながりの中で、ビジネスの視点を身につける探究型・体験型の学びへと変わってきているそうです。
県内すべての商業高校で取り組んでいるその代表的な授業が『課題研究』や『商品開発と流通』です。『課題研究』とは、地域協働や観光、広告デザイン、アプリケーション開発など、さまざまなテーマの中から生徒が受講したいテーマを選択し、生徒自身が課題を見つけ、みんなで話し合いながら解決策を探していく授業です。グループワークを通してコミュニケーション力が、また、ディスカッションや資料作成を通して考える力や表現力などが鍛えられます。
次に『商品開発と流通』は、地元の企業と協力し商品開発に取り組む授業です。ターゲットにするお客様、価格、食材、味、パッケージ、そして販売方法など、生徒が意見を出し合い、案を企業に提案しながら開発を進めていきます。今回、見学した授業では、『モホロジカル(一つのモノを構成する要素を分離、組み合わせることで新しいモノをつくる発想法)』を生徒が学んでいました。その一例として、ファーストフードチェーン・サブウェイのメニューを題材に、オリジナルの商品を考えました。生徒たちは、それぞれ数種類あるパンやトッピング、野菜、ドレッシングを思い思いに組み合わせて新商品開発を疑似体験していました。
こうしたさまざまな学びを重ねながら、最終的には地元企業とジャムの新商品を開発するそうです。
『商品開発』の授業では、企画や開発、流通に必要な知識や方法などを覚えられるということで、「企業の方々との話し合い、提案する資料のまとめなど、多くのことが経験でき、その中で自分の成長も感じられます」と話す生徒もいました。
愛知県立愛知商業高等学校
愛知商業高校ならではの多彩な取り組み
『ケースメソッド』
愛知商業高校では、実際に社会で起きた出来事を、グループなどで分析、意見交換することで、自分自身の考える力を鍛える『ケースメソッド』を授業に取り入れています。
今回、訪問した際は、ビジネス基礎の授業で『牛肉偽装事件(平成13年)』を題材に取り上げ、「企業の不祥事はなぜ起きるのか」、「告発者はどんな思いで告発したのか」、「自分が主人公の立場なら、告発するか、しないか。なぜそう思うのか」など、生徒それぞれが意見を出し合い、グループ討議を行っていました。さまざまな意見を聞き、視野を広くすることがこの授業のねらいです。
生徒の一人は、「みんなと話し合って新しい考えを出すことが面白い」と授業について話していました。
ビジネスの視点を取り入れた学校生活
ユニークな取り組みとして注目を集めている『オフィスカジュアルデー』と『オフィスメイク』。毎週金曜日、将来を意識してビジネスの場にも合う服装で登校する生徒はオフィスメイクをして通学することができます。生徒会主導でスタートしたこの取り組みは、日ごろの学校生活の中からビジネスの視点、社会との結びつきを意識して学ぶ商業高校の特色を活かしたものです。
ビジネスシーンにふさわしい服装、メイクはどういったものなのか、生徒が自分たちで考え、学ぶよい機会になっているそうです。
部活動『ユネスコクラブ』
『課題研究』の授業からはじまった地域活性化のための養蜂活動(はちみつを取るためミツバチを飼育する活動)を継続していくために部活動という位置づけになった『ユネスコクラブ』。地元企業の協力のもと、徳川園を蜜源にした『徳川はちみつ』を使用して、アイスクリームやチョコレートなどの商品開発を行っています。
校舎の屋上でミツバチを飼育 その数 約8万匹
徳川はちみつを使った商品。今年の目標は新たなアイスクリーム開発。
シートベルトやテント、カーテンなどの廃材を活用したショルダーバッグ『推し活バッグ』。 色や大きさなどは、同校の生徒にアンケート して決めた。
透明な素材で作った“見せるポケット”がポイント
令和5年度は、株式会社東海理化などと共同で、シートベルトやテントなどの廃材を再利用した『推し活バッグ』を企画。ジャパンモビリティショーで販売しました。
また、毎年、研究発表や観光事業企画を競う大会に参加していて、今年の『生徒商業研究発表大会』では、推し活バッグをきっかけとした自動車産業が抱える課題の解決策をまとめ、全国大会出場を目指しています。
学び続ける姿勢が大切な時代
学ぶ楽しさを知ってほしい
ビジネスとは時代とともに変化を続けるもの。そのことを踏まえ、愛知商業高校の校長である川口宗泰さんは「これからは社会人になっても学び続ける姿勢が大切。知識をアップデートしていく学び方を身につけることが求められている」と語ります。そのための第一歩は学ぶ楽しさを実感すること。「その点、商業高校は、地域や企業とのつながりの中で、生徒自身が面白さに気づく機会に恵まれていると思う」と話します。
愛知商業高校 川口 宗泰 校長
最後に中学生に向けてメッセージをいただきました。
「今、いろいろなタイプの高校があるので、自分の目で確かめてみることが大切。実際に見ることで、そこにはさまざまな可能性があることに気づけます。ぜひ自分自身でじっくりと考えてみてください」。
DATA
愛知県立愛知商業高等学校
(名古屋市東区徳川一丁目12番1号)
『ITビジネス科』『グローバルビジネス科』『会計ビジネス科』の3学科編成。就職と進学の比率は約5:5。日商簿記検定や情報処理技術者試験などの資格取得、大学入試に向けた小論文対策などをサポートする特別講習を実施。また、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の理念を実現するために活動する『ユネスコスクール』に加盟しており、マレーシアにある姉妹校との交流や、廃材を利用した商品開発など持続可能な開発に関わる活動に取り組んでいる。
(令和6年7月取材)





