雇用セーフティーネット対策訓練(慈恵福祉保育専門学校)
雇用セーフティネット対策訓練で再チャレンジ
保育士を目指す2年間
愛知県には「雇用セーフティネット対策訓練」という、求職者の就職を支援する職業訓練のしくみがあります。公共職業安定所(ハローワーク)に求職の申し込みを行い、就職に必要な訓練であると認められた方を対象とした職業訓練で、受講料は無料です。訓練期間はコースによって異なり、今回取材した保育士養成科では2年間で保育士資格の取得を目指します。
今回は、保育士養成科の訓練を実施している岡崎市の慈恵福祉保育専門学校を訪ね、実践を重視した授業や学びの環境を取材しました。また、社会人経験や子育て経験を経て保育士を目指す2人の訓練生にも、学び直しを決意したきっかけや現在の学び、将来の目標についてお話を伺いました。
現場で活躍できる保育士を育てる 実践を重視した学び
『現場で活躍できる即戦力の育成』を目指す慈恵福祉保育専門学校。同校の久米明美学監は、実際の保育現場を意識した学びを大切にしていると話します。
慈恵福祉保育専門学校 久米明美学監
「保育学科では、経験豊富な教員による実践的な授業や実習を通して、現場で求められる知識や技術を身につけていきます。少人数制だからこそ、一人ひとりの成長を丁寧に見ながら指導できることも本校の特徴です。」と久米先生。
さらに、「系列に保育園や認定こども園など5つの園があり、実際の保育現場で学ぶ機会も充実しています。」と、実践の場が身近にあることも同校の強みとして挙げます。多くの実習や演習を取り入れながら、現場で必要となる実践力を養っています。
ホールには毎年卒業作品が飾られている
また、学びを支える施設・設備も充実しています。入浴実習室では、赤ちゃんの人形を使って沐浴の方法を学び、調理実習室では離乳食づくりを通して、子どもの発達段階に応じた食事について理解を深めます。このほか、情報機器の活用方法を学ぶコンピューター室、ピアノ室など環境が整っています。
入浴実習室
コンピューター室
ピアノ室
遊びを通して学ぶ 子どもの気持ちと保育者の視点
今回見学したのは、11月頃に行われる保育実習に向けた2年生の授業です。実習で作成する指導計画を考えるため、学生たちはオリジナルのフリスビー作りに挑戦。完成したフリスビーを使って実際に遊びながら、子どもたちがどのように遊びを楽しみ、どのような気持ちや行動を見せるのかを自ら体験しながら学んでいました。
授業では、学生たちはグループに分かれ、それぞれが作ったフリスビーを投げ合ったり、ひもとひもの隙間を通すゲームに挑戦したりしながら遊びを体験。思うように飛ばず苦戦する学生に対して、「おしい!」、「もう少し上を狙ってみよう!」と自然に声を掛け合う姿がありました。
授業を担当する小田千代子先生は、学生たちに「まずは自分たちが楽しむことが大切。子どもたちはもっと工夫して遊ぶよ。みんなも考えてみて。」と声を掛けます。その言葉を受けて学生たちは、遊び方を試行錯誤しながら、『子どもならどんな遊び方をするだろう』、『このルールは分かりやすいかな』と保育者の視点で考え始めていました。
遊びの体験を終えると、その時の気づきをすぐに記録する時間が設けられていました。「気づきは時間が経つと薄れてしまいます。だからこそ、その瞬間に感じたことを書き留めることを大切にしています。」という小田先生の指導のもと、学生たちは、フリスビーが思うように飛ばない難しさや、声を掛けてもらうことで生まれる『もう一度やってみよう』という気持ち、遊び方を少し変えることで広がる楽しさなど、実際に遊んだからこそ得られた気づきを振り返っていました。
指導計画づくりでは、遊びの内容だけでなく、対象となる子どもの年齢や活動場所の広さ、安全面なども踏まえて作成します。
学生の一人は、「自分が保育士として現場に立ったときに活かせるよう、一つひとつの学びを大切にして、授業の内容だけでなく、先生の声掛けや子どもへの接し方まで細かく観察し、気づいたことをメモしています。」と語ってくれました。
「一番の学びは現場にあります。」と話す小田先生。実際に子どもたちと関わる中でしか得られない気づきや学びがあるからこそ、実習は何より大切なものと感じています。そのため、学生たちには授業で得た気づきを実習で実践し、子どもたちと関わる中でさらに学びを深めてほしいと考えています。
保育実習の授業を担当する小田千代子先生
夢をあきらめたくなかった
今回、社会人経験を経て保育士を目指すお二人にお話を伺いました。
2年生 伊藤優祐さん
伊藤優祐さんは、放課後等デイサービスで子どもたちと接する中で、一人ひとりに寄り添いながら成長を支える仕事にやりがいを感じる一方、『もっと子どもの発達や心の動きを理解し、より良い関わりができるようになりたい。』という思いが次第に強くなっていきました。そして、幼い頃から抱いていた保育士になる夢をあきらめたくないという気持ちが後押しとなり、学び直しを決意しました。
ハローワークで「雇用セーフティネット対策訓練」のことを知り、慈恵福祉保育専門学校へ入学。現在はお子さんを育てながら、保育士資格の取得を目指して学んでいます。特に印象に残っている授業は発達心理学で、デイサービスの現場で感じていた疑問が理論的につながり、「あの時こうしてあげればよかった。」と新たな気づきを得られたといいます。
将来は公立保育園の保育士として働くことを目指しており、「笑顔を大切にできる先生になりたい。」と話してくれました。
2年生 戸田未菜さん
戸田未菜さんは、高校卒業後に自動車部品メーカーへ就職し、10年以上勤務してきました。結婚・出産を経て子育てをする中で、『子育てに悩む保護者の力になりたい』という思いが強くなり、保育士への挑戦を決意しました。
職業訓練制度を知ったのは、子育て中の女性のブログがきっかけ。ハローワークの説明会に参加し、家族の後押しもあって入学を決断したそうです。
現在は発達に特性のある子どもたちへの支援に関心を持ち、発達支援センターなどへの就職を視野に入れています。気になる施設にはボランティアとして足を運び、自ら学びを深めているそうです。
「正社員を辞めて学校へ通うことは大きな決断でした。でも保育士になりたい夢をあきらめたくなかった。」と振り返る戸田さん。
また、「受講料の負担がない制度は、家庭を持つ立場にとって本当にありがたい制度です。学び直しへのハードルを下げてくれました。」と話します。
これから保育士を目指す人に向けて、「核家族でも、叶えたいという気持ちがあればなれます。夢をあきらめないでください。」とメッセージを送ってくれました。
新たな一歩を踏み出すために 一人ひとりの挑戦をサポートします
慈恵福祉保育専門学校では、社会人経験や子育て経験を経て入学した訓練生一人ひとりに寄り添い、それぞれの夢や目標の実現を支えています。少人数制ならではのきめ細かな指導に加え、実践的な授業や豊富な実習を通して、知識や技術だけでなく、自ら考え行動できる力を育んでいます。
授業の中で小田先生が話していた「一番の学びは現場にあります。」という言葉のとおり、同校が大切にしているのは、子どもを一人の人として尊重し、その思いや個性に寄り添える保育者を育てることです。実践を重ねながら学びを深め、現場で求められる力を身につけた学生たちは、それぞれの夢に向かって新たな一歩を踏み出しています。
DATA
慈恵福祉保育専門学校(岡崎市大和町字中切1-9 )
校訓は「自己覚知(じこかくち)」。校内の各階に設置された鏡を通して日常的に自分自身を見つめ、知識や技術だけでなく、相手を理解し寄り添う力を育む教育を大切にしています。交流会やスポーツ交流会、慈恵祭、体育祭、クリスマス会、ハロウィンなど年間を通して行事が充実。年齢や学科を超えた学生同士の交流も盛んです。
設置学科
・保育学科(2年制)
・介護福祉学科(2年制)
取得を目指せる資格
【保育学科】
・保育士(国家資格)
・幼稚園教諭二種免許状 ※豊岡短期大学通信教育部こども学科学習サポート校で取得可能
・介護福祉士実務者研修修了資格(受講希望者のみ)
・幼児体育指導者 など
【介護福祉学科】
・介護福祉士(国家資格)
・介護予防運動指導員 など
慈恵福祉保育専門学校 ホームページ 雇用セーフティネット対策訓練 三河高等技術専門校
(令和8年6月取材)
