こんなときどうする?保険・年金Q&A 連載第4回
保険・年金Q&A第4回は、社会保険の手続でありがちな給与と賞与の取り違えについて、その原因・対処法・防止法を解説してまいります。
弊社では、夏と冬にそれぞれ基本給の2カ月分の賞与が支給されてきました。これが今年度から変更となり、四半期ごとに基本給の1カ月分をベースとして、会社、部門、個人の成果に応じた賞与が支給されるようになりました。人事評価が賞与に反映されるようになったのです。
そして、これまで通り、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出していたのですが、年金事務所の方から「これは賞与ではなく給与なので、算定基礎届や月額変更届の方で届出を行うように」との指導を受けてしまいました。
賞与は弊社の変更後の就業規則に基づいて支給されていますし、賞与と給与とで、社会保険料の料率は同じですから、実質的な不都合はないようにも思われます。
なぜこのような指導を受けたのでしょうか?また、どうしたら指導を受けずに済んだのでしょうか?
被保険者賞与支払届
賞与を支給したときは、「被保険者賞与支払届」により支給額等を届出する必要があります。この届出内容により標準賞与額が決定され、賞与の保険料額が決定されるとともに、被保険者が受給する年金額の計算の基礎となるものですから、適切な届出が必要です。
「被保険者賞与支払届」の対象となる賞与は、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものとされています。これは、全企業に統一の基準であって、各企業の就業規則の定めなどによって変更されません。
なお、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象とされ、また、労働の対償とみなされない結婚祝金等は、対象外となります。
かつては、「賞与支払届(個人票)」とともに「賞与支払届総括表」を提出することになっていました。これには、事業所が今後賞与を支払う予定の月を記載することになっていました。この時点で、年4回の賞与を支払う予定であると記載すれば、これは賞与ではなく給与として扱われる旨の説明が、フィードバックされていたのです。
しかし、この「賞与支払届総括表」は、令和3年3月をもって廃止されました。 現在では、社会保険手続担当者や人事部門責任者などが、社会保険での賞与の定義を正確に理解しておいて、注意を払わなければなりません。
定時決定・随時改定での保険料
年4回以上支給される報酬は、標準報酬月額の対象とされるのですが、具体的には定時決定(算定基礎届)や随時改定(月額変更届)の手続によって、社会保険料に反映されます。
毎年、7月1日現在で使用される全被保険者について、同日前3カ月間(4月、5月、6月、いずれも支払基礎日数17日以上)に受けた報酬の総額をその期間の総月数で割って得た額を報酬月額として標準報酬月額を決定します。これが定時決定の手続です。
月額変更届は、報酬の増減が例外的に大きい被保険者について、不定期に行う随時改定のために提出する届出です。これは、算定基礎届によって定時決定を行う原則に対する例外と位置付けることができます。
どちらの手続でも、健康保険は5万8千円から139万円までの50等級、厚生年金保険は8万8千円から65万円までの32等級の標準報酬月額に当てはめて、これに料率を掛けて保険料を算出します。保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。
賞与にかかる保険料
賞与にかかる保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、その「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率を掛けた額です。保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。
標準賞与額には上限があり、健康保険では年度の累計額573万円(年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで)、厚生年金保険は1カ月あたり150万円とされていますが、同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されます。
こうしたことから、年2回の賞与と年4回の給与とでは、保険料率が同じであっても、保険料の計算結果が異なる場合があるのです。
手続のやり直し
まず、事業所所在地を管轄する年金事務所へ連絡し、「賞与支払届取消届(訂正届)」を提出します。年金事務所で様式を案内してくれます。電子申請で誤送信した場合も、取消は年金事務所で対応します。取消が受理されると、標準賞与額は「0」として扱われます。
誤って賞与として出した給与が4〜6月の報酬に含まれる場合、定時決定(算定基礎届)の対象となりますし、固定的賃金の変動に該当し、3カ月平均が要件を満たす場合には、随時改定(月額変更届)の対象となります。これらによって、「賞与」として処理した月の報酬額が、報酬月額に含まれるように修正されます。悪質でなければ、基本的にペナルティーはありません。
まとめ
社会保険の手続ミスは、企業の信頼性や従業員の生活保障に直結する重要な問題です。ミスの原因を構造的に理解し、発覚時には迅速・誠実に対応しましょう。そして、再発防止のためには人材教育やシステム化が不可欠です。
さて、今回をもって、「こんなときどうする?保険・年金Q&A」の連載は終了です。ご愛読ありがとうございました。
