キャリアよもやま講座 連載第2回
連載の第2回目となります。キャリア関連の情報過多の中、キャリア形成に必要なことと必要でないと思われることを意識しながら、自立的なキャリア形成の基盤となる考え方に視点を当て、少し辛口なコメントについてはご容赦を願うとして、今回も思いつくままにピックアップした話題を話していきます。
1. ふたつのキャリアとは
この講座はワークキャリアについてお話しを進めています。人は生活のために働き、仕事を通じて経験を積み重ね学びを深め成長し、これらを通じて稼得能力を高め、自己実現を図って、社会に貢献していきたいとの思いも強まっていくことでしょう。日々で立ち止まりこれらを実感できる方は、充実した人生を歩んでおられるものと思います。
仕事は生活していくうえで大切なことに変わりはありませんが、それだけでは幸せな生活は難しいものです。働くこと以外にも、夫婦仲睦まじく暮らしていくこと、また充実した独り暮らしも格別なものでしょう。子どもと遊ぶことや家族と談笑する時間も大切なことですし、勉強する時間、食事や睡眠、そして趣味に興じることや運動の時間も必要なことです。たまには何も考えずに音楽などに耳を傾けリラックスすることや、絵画を描くなどの習い事も素敵な時空を作っていく大切なことだと思います。
キャリアには二つの領域があります。ひとつ目は、ワークキャリアといい、仕事人生のことであり、仕事に関する職務経歴及び将来の展望見込み(将来ビジョン)などのことです。もうひとつはライフキャリアと呼ばれているもので、仕事以外の生活のことで、家族・家庭・友人や地域社会における個人の活動のことです。もっとも、家族の介護や子どもの教育などが仕事に対して影響を及ぼすことから、結果として、ふたつのキャリアは相互関連しながら、キャリア形成が図られていくことになります。そしてこれらを支えているのが、逆説として、稼得のため働くこと、ワークキャリアの形成ということです。現役で仕事をしている間はもちろんのこと、リタイヤ後も稼得実績は年金に繋がっていくので、目が離せませんね。
米国の教育学者のスーパー博士が考え出した、ライフキャリアレインボーは人生の深度に視点を置いたものですが、二つのキャリアを平面的な視点で捉えてみると次図のようになります。
2. 人事部長のつぶやき
幾つかの企業で人事部の仕事をしていた頃から、多くのビジネスパーソンと人事評価面談や採用面接などを通じて気づいたことは、確りとしたワークキャリアを形成していく人には共通した行動パターンがあり、それは「自分の雇用は自分で守っていく」との気概を基底に自立自走で活動しているということです。
その行動パターンを具体的なものとしてまとめますと、次のようになります。
- 自分の雇用は自分で守っていくとの強い自負心のもと、「自ら気づき 自ら考え 自ら行動していく」ことを心掛け、日々の課題の解決方法を考えることを習慣づけている。
- 自力で考え高めの目標を設定し、達成するための創意工夫を日々実践している。期待値以上の成果を出せるように心掛け、それを可能とする知識やスキルの習得のため、主体的に学び、知識の補充を図り、経験値を上げる機会を積極的に獲得しようとしている。
- 日々の仕事などから得た経験を、次に活かしていけるよう、振り返りを怠らず、経営学でいうところのPDCAを回す習慣を身に付けて常に自己の成長を計測している。
- 期限を遵守し、小さな約束も忘れず実行している。
このように行動している人は、いわば仕事のできる人であり、会社が傾くようなことがあっても心配は不要といったところです。何故なら、これらの人は自らのキャリアの開発やその形成で自他ともに納得感は大きく人材価値は高く、エンプロイアビリティ(雇用され得る能力)を有しているからです。もっとも、普通に考えれば、そんなことできませんという人も多いでしょう。しかし、現時点では至っていなくても、これらの行動パターンに着眼し意識して日々行動していくこと、先ずはシンプルに「もの真似」をして下さい。すると良い方向にどんどんいけると思います。
3.運気創生による人脈づくり
ワークキャリアの展開をシンプルに考えてみたいと思います。今後のキャリアについて専門家などに相談していても、色々な提案はあるでしょうが、結局のところは自分で決めて進めていくことになります。自らが良いと思う方向に進んでいけば、「あの時にこのようにしておけば良かった」などと悔やむこともないものと思います。難しくいえば、「自己責任による承諾」ということになります。
もっとも、自己責任とはいいながらも、やることはやらないと良い方向には動きません。そこで、「魅力・努力・運気(=人脈)」をキーワードに、自立自走できるキャリア力について考えてみます。
自らの魅力を磨くには、多くの経験を積んでいくことで高まります。また努力するとは、一意専心、万里一空のごとく、目標を見据えて継続的に活動を続けていくことです。これらについては自らの研鑽で行っていけますが、運気はそうはいきません。しかし何も「運を天に任せるよう」な話をしている訳ではないので、ご安心ください。運気を高めるには、自らの方向性をサポートして貰える人脈を持つことです。人はひとりでは生きていけません、色々な方との出会い、力添え、ご紹介など、人との出会いで多くのサポートを受け感謝することになります。この運気創生の出会いの可能性を高めてくれるのは、ポジティブな雰囲気を醸し出していくことです。明るく楽しく元気よく、ポジティブな行動を心掛けていると、仲間や関係者にポジティブな影響を与え、後光が指して人が周りに集まって来てくれます。余談となりますが、私の座右の銘は報恩感謝です。
逆になっていく決定打をひと言申し添えます。いつも忙しいと口に出していると仕事も人も近づいて来なくなります。また、相手の見境もなく周囲に愚痴を漏らしているようでも同じことになるでしょう。
4.学びに無駄はひとつもなし
人間的な魅力を持つようにといわれても、ポジティブな行動を心掛けなさいといわれても、突然の無茶ぶりに怖気づかれるかもしれません。そこでどなたにでも簡単にできる二つの特効薬があります。
ひとつ目は「自信を持つ事」です。ズバリ、何事かを継続的に続けていけばよいのです。人間は好きなことをしていると、アニメの主人公のように目が輝くようなことは良くあることです。得意な分野を持ち根拠のある自信を持つこと、これは誰にでも簡単にできます。因みに、私ごとではありますが読書感想を40年以上続けています(色々なところで自慢なんかしていたりして…)。
もうひとつは色々と学ぶことです。キャリアなどの講習会でも、「学びに無駄はひとつもなし」という言葉をしばしば使って、様々な学びを続けていくことの大切さをお伝えし、お勧めしています。様々というぐらいですから、読書であれ、体験であれ、そして成功事であっても、失敗事であっても、もちろん他者からの見聞であろうと、どんな場合でも学びに繋がっていくという発想で、何歳になっても必要なことだと思います。そしてこの発想に立てば、何についても経験と位置付けられるので失敗を恐れずに、新しいことにも挑戦できます。
また、皆さんのワークキャリアに合せて、可能であれば、複数の領域について体系的に学び続けることを意識すると、バイパス路線が出来て、目標に近付ける可能性は高まり、併せて守備範囲も拡大し多能工化はもちろんのこと、キャリア形成の複線路線にも繋がっていき、積極性次第では人脈も倍になるのではないかと思っています。
5.資格取得も一考の余地あり
これまでお話ししてきた、「自信をつける、学びを続ける、人脈をつかむ」の観点から、資格取得についても一考の余地を持って貰っても良いと思います。資格には、法律により独占的業務が認められているものや、名称の独占使用が認められているものなど、国家資格の他、公的資格や民間資格など沢山あります。資格取得の合格の喜びは自信となり、受験及びその専門性の展開のため勉強の継続は必須であり、専門性を共有する者同士の人脈の構築にも期待できます。
また、資格取得を目指すエネルギーや専門性が、再就職やセカンドキャリアでのアピール材料になることも多いと思います。しかし一方では、職歴とかけ離れた分野のようなものであれば、「仕事を疎かにしていたのでは」とのマイナス面の評価を持たれることもあるので、その点は注意が必要です。なお、沢山の資格を取りまくる資格マニア的な方は、独特の価値観として捉えられるに留まると思います。
まとめ
今回の話は、キャリアの相談や書籍などで情報を沢山仕入れ過ぎて自己フォームが分からなくなるような悩みを回避して貰いたく、自らがシンプルに「できる人のもの真似」をする、「自信を持つ」、「学び続ける」など、簡単に行動していくための考え方をお伝えしました。「学びに無駄はひとつもなし」をキーワードにご参考になれば嬉しく思います。
