キャリアよもやま講座 連載第1回
今回から「キャリアよもやま講座」を担当致します。語り口調で講義風に進めていきたいと思います。この講座は、ワークキャリアに関連する話題を「よもやま話」として、雑談風に語り進めていく四回連載ものです。中高年の社会人の方や学生の皆さん向けに、セカンドキャリアを考える上で、或いは就職活動を通じて将来のキャリアを考えるような際に、なんらかのヒントになればと考えています。
この回は、「キャリアを考えていくカンドコロ」をお話しし、次回は「キャリアに必要なことと必要でないこと」、三回目は「就活に役立つ様な話」を、そして四回目は、労働法に関して「知っておくと損をしないなるほど知識」を予定しています。では、思いつくままにピックアップした話題を話していきます。
1. そもそもキャリアとは
大型書店の書棚にはキャリア関連の本が沢山並んでいます。年三回あるキャリアコンサルタント試験には年間1万人以上が受験申込みされています。また、キャリア関連の講習会も官民問わずSNSなどでの開催案内がよく目につきます。このように巷でキャリアの言葉は溢れており、関連イベントも花盛りといった感があります。とはいいながらも、真剣にキャリアを意識されるのは、学生の皆さんは就職活動期であり、ビジネスパーソンの方は50歳前後から定年期前後におけるセカンドキャリアを考えざるを得ない頃か、失業(転職)など緊急時に遭遇した際に、殆どの方のきっかけとなっているのではないでしょうか。
そもそも、キャリア(career)とは、荷馬車がたどってきた車輪の轍(わだち)、車道を語源としています。難しい理論もあるようですが、皆さん自身が歩んで来たヒストリーのことであり、これから歩んでいく方向性を言い表すぐらいの意味合いに捉えておいて下さい。
平成21年に高校の学習指導要領にキャリア教育が初めて記載され15年以上が経ちました。この間に学校でのキャリア教育はすっかり定着し、自己分析を行い職業指向性などについて知ることを学び、サポートを受けながら「夢の実現へのキャリアデザイン」を描くことが学習の常となりました。その結果、目的意識が高まり職業に就くことについて向かい合うなど大きな貢献を果たしてきました。一方で、やりたい仕事の呪縛に捉われて、キャリア志向の狭窄化が一部に生じているのも否めません。「これがしたい」と思えばそれ以外の選択肢が見えなくなってしまうのです。
その結果、少しでも違う仕事に就けば違和感を過敏に持ってしまい、勢い仕事に嫌気が差すなどして、職場での行動にも影響が出てしまうことや、ストレス耐性が弱まるなどして、転職を繰り返すようでは困りものです。このようなことを、私はキャリアのマイナススパイラルに入ってしまうとして、心配しています。もっとも、私も、合格率6%前後の社会保険労務士の試験勉強をしていた頃は、「宝くじで3億円当たる運があるならば社会保険労務士に受かりたい」と思っていたぐらいですから、余り偉そうなことはいえません。
2. ダーツを的から外さない
もっとキャリアをシンプルに考えてみてはどうでしょうか。
キャリア形成において「やりたい自分が見つかった」としても、実力、タイミング、資金、健康など良い要素が揃ってこそ夢の実現も叶うというものです。しかしその位ぴったりとしなくても、よく似たようなことが実現すれば、夢の実現と考えることはできないでしょうか。
やりたいと思っている仕事や職種にドンピしゃりと当てはまらなくても、関連する仕事に就くことや、或いは方向性の似たような仕事に就けば、自己が有している指向性やノウハウを活かしていける、将来的には活かせるよう工夫していくことができると考えてみることです。いわば「合理的理由による戦略的妥協」ということになります。一歩後退して二歩前進といったところでしょうか。こう考えると、夢の実現ややりたいことの目標が拡がります。比喩すると、ダーツの矢が真ん中に突き刺されば満点ですが、円周ギリギリの端でも、当たったことには間違いがないので点数は付きます。これを「ダーツは的のどこにあたっても点数は付く」ということで表しています。
高校野球でも、投手がなかなかストライクを入れられないような時に、捕手が両手を思い切り広げてリラックスして投げろとアドバイスをするよく見かけるシーンに通じますね。このように考え方を少し変えると、拡大した目標の達成確率が高まり、ストレスも少なく、動いている間に新しい自己の側面を発見することや新たな機会に出会うことも度々です。
私の場合は、高校生の時は歴史の先生の影響を受け、大学院まで行って高校教諭になりたいと常々思っていました。しかしその後はビジネスの世界に移り、法務部や人事部などでコンプライアンス教育や人材育成教育などに携わることとなり、結果的には紆余変遷しながらも大学教員と、夢は形を変えて実現しているようです。なりたい自分のイメージを常に持ち続けていくと夢は実現します。ただ、ダーツの的を拡げておくことと、その夢の実現に期限を持たせないことが大切です。
3.キャリアの道筋とは
キャリアの標準スタイルというものがあります。神戸大学名誉教授の金井壽宏博士ら数人の先生が提唱、又は紹介されています。拙著でも、金井博士らのご実績を紹介しながら、これらを参考として次表のように作成し独自にネーミングしてこれを解説しています。この表は、学生の皆さんにも中高年の方がセカンドキャリアを考える際にも同じように使えます。
初志実行型は、最初から「このような仕事に就きたい」と強烈なキャリアビジョン(目標)を持って、その道を怯まず一途に突き進んでいくタイプです。弁護士や医師、ピアニストなどを目指そうとする方などが有名どころでしょうか。なんとなく職業人口の少ない職種イメージが伴います。ただ、能力適性が合致していないと前述のような視野狭窄に陥るリスクもあります。
夢の実現型は、キャリアの節目ごとに道筋を自らの意思で選んで進んでいくタイプです。先ずは夢の実現に向かって一歩を踏み出すことから始め、途中で幾度かの転機(新たなキャリアビジョン)の際に、そちらの道に方向を微修正しながら、或いは大幅に舵を切りながら、機会を捉えていくものです。私自身の事例などはこれに該当するのでしょう。もっとも、この転機は偶然性の時もあるでしょうし、自らがその方向にアクションした結果として訪れる場合もあるでしょうが、何れにしても、大きな枠組みのキャリアビジョンを抱いて、何らかの知識・スキルを事前準備していないと対処は難しそうです。この点、固く表現すると、「予想して準備していると必然的な帰結性を伴う」ということになります。努力は何らかの形で報われ、マイナスとは決してならないのです。
適性模索型は、なんとかなるだろうとのタイプで、いわば汎用性が高いといえます。多くの方がこのタイプだと思っています。このタイプには、「そのうちに向いた仕事に出会うだろう」という楽観タイプから、「きっとこの仕事は向いているだろう」というGoodな思い込みタイプなど、風のおもむくままのパターン。「変化は恐い、失敗はしたくない」という現状維持のタイプ、そして「生活のためならば」という割り切りタイプなどがあり、他にも色々ありそうに思います。夢の実現型と決定的に異なるのは、大小問わずにキャリアビジョンを持っていても、節目ごとにそれを思い出せるかどうかの有無です。このタイプは汎用性があるが故に、仕事に就ける機会が多いという優れた点がある反面、現状から逃避したいと考えてしまうとか、色々手を付け過ぎて消化不良を起こすようであると、悪い方向に向かい最後は「自分の人生は何だったのか」と悔やむことになるかも知れません。
さて皆さんはどのタイプに近いですか。
まとめ
今回の話をまとめてみます。キャリアの岐路においてどの道に進むかを決定するのは皆さん自身です。しかしながら、自らがイキイキしたいとばかりにキャリアを考え過ぎて、ストレスが高まるようでは大変です。ストレスを少なくして、「明るく 楽しく 元気よく」をモットーにキャリア形成を考えていくことが、一番大切な事ではないでしょうか。この観点から、キャリアを考えていくカンドコロとして、「ダーツの的の話」を頭の片隅に置いてもらえると嬉しく思います。
