サポート施設におじゃまします!


障がいのある方が働き続けるための実践的サポート

 障がいのある方の雇用の促進と安定して働き続けられる環境づくりのために、さまざまなサポートを行う「愛知障害者職業センター」。障がいのある方への就職相談、就職・復職準備のための支援、安定して働き続けるための支援などを行っています。
 また、受け入れ先となる事業主に向けては、雇用管理や施設改善に関する助言・援助を実施。関係機関に対しても、就労支援に関する助言・援助を行い、地域の公共職業安定所(ハローワーク)などと連携しながら、総合的なサポートを進めています。
 今回はセンターの指針や施設の概要について、所長の永井伸二さんにインタビュー。また、実際に支援を担当する職員の方に、サポート内容などを伺いました。


相談から就職後まで関係機関と連携して一体的支援を実現


所長の永井 伸二さん


 障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しており、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づいて都道府県ごとに1~2か所設置されています。愛知県には名古屋市の本所と豊橋支所があります。永井さんは、「障害者職業センターは、仕事の紹介や情報提供を行うハローワーク、就業面と生活面について一体的に支援する地域密着の就業・生活支援センターなど、就労支援に関する各機関と密接な連携のもと、障がいのある方の就労支援を行っています。それぞれどの窓口にご相談いただいても、障がいのある方や事業主の方が最適なサービスを受けられるよう、各機関が一体となって支援させていただいています。」と話します。


職業相談・評価(就職相談と適性確認)を踏まえ、就職に向けての計画を作成

 就労を希望しているもののどのような仕事に向いているかわからない、就職に向けてどのような準備が必要か知りたい、休職後に復職できるか心配など、センターへはさまざまな不安や悩みを抱えた障がいのある方が相談に訪れるそうです。

 センターの利用は予約制で、障害者手帳がなくても医療機関の診断書があれば利用できます。相談希望者は、ハローワークなど関係機関を通じて、あるいは電話などで直接センターへ連絡し、相談内容や現状を伝えて相談日時を予約します。
 予約日にセンターを訪れた方はまず、障害者職業カウンセラーと面談します。

 「カウンセリングは1回2時間ほどです。前半の1時間程度をかけて現在の心身の状態や希望する仕事、就職先についてヒアリングを行います。その後、厚生労働省編の一般職業適性検査や、作業能力を確認するための器具を使った検査などを実施します。」と説明するのは、上席障害者職業カウンセラーの市川さん。


相談室


職業評価で実施している検査ツールの一つ(カード分類)


 「現時点での適性や課題を明らかにし、まずはご自身の強みや苦手なことを一緒に整理します。大切なことは、相談者の方がどのような思いを抱いているかということです。どのような仕事に向いているかわからないという方はもちろん、本当は仕事をしたいけどうまくできない、いつも同じ失敗をしてしまうなど、一人ひとりの困り事、課題、希望などを丁寧に伺うことが重要です。それらの課題も踏まえた上で、就職へ向けてのロードマップとなる計画を作成します。」と話します。


上席障害者職業カウンセラーの市川 滋之さん


職業準備支援を通じて適性と課題を知る

 職業相談・評価(就職相談と適性確認)を受けた後の流れは、本人の希望や適性に応じてさまざまです。ハローワークで就職活動を始める方もいれば、評価結果をもとに「障害者就業・生活支援センター」や「就労移行支援事業所」でサポートを受ける方もいます。また、障害者職業センターでは「職業準備支援」という選択肢も提供しています。

 職業準備支援のプログラムは週5日、約2か月。障害者職業カウンセラーの柚木さんによると、プログラムは、主に3つの柱で構成されているとのことです。


職業準備支援室


 1つ目の柱は講習。例えば就職に向けて、基本的な社会人としてのマナーや職場でのコミュニケーションスキル、ストレス対処法など、さまざまなテーマの講義を受けます。2つ目は模擬作業です。パソコンを使った入力作業、データ修正をはじめ、製造の現場を想定したピッキング(指示書などに基づいて必要な部品や製品を取り出し、集めること)、計量、組み立て作業などを実践します。3つ目は個別面談の時間です。柚木さんは「1~2週間に1度面談を行いながら、プログラムの学びをどのように職場で活かしていくかなどを振り返り、本人に合った就職先を探していきます。」と話します。

 職業準備支援の主要な目的の1つに、本人の長所や適性を明確にすることが挙げられます。「本人が希望する仕事と適性が必ずしも一致するとは限りません。幅広い分野を学び、いろいろな業務を経験することで、本人も気付いていなかった得意分野に気付くこともあります。また、苦手な作業に対しては、傾向を明らかにすることで、職場で困らないような工夫、意識すべき注意点やリカバリー術などを、就職前にあらかじめ体得することができます。」と柚木さん。

 そして、プログラムの集大成として作成するのが、応募先企業へ提出する自己紹介状です。自己紹介状は、2か月を振り返り、プログラムを通して明確にした自分自身の適性や課題、対処法、会社に配慮をお願いしたいことなどをまとめるシート。就職活動の際に履歴書や職務経歴書と合わせて応募先企業に提出します。

 2か月のプログラムを経て自己紹介状をまとめることで、本人は自分自身の強みや思いを改めて見つめ直すきっかけになります。また、2か月間、近くで見守ってきたセンターの職員と話し合いながらまとめることで、どのような場面で力を発揮できるか、どのような配慮があれば活躍できるかを応募先企業の事業主へ具体的に伝えることができるのです。


ジョブコーチ支援で障がいのある方と事業主をつなぐ

 障害者職業センターでは、障がいのある方が就職・復職後、職場でスムーズに適応できるよう、専門員が事業所に出向いて行う「ジョブコーチ支援」を実施しています。
 作業内容の困難さやコミュニケーションの問題、障がいについて事業主や職場の同僚にどの程度開示するべきかなど、相談内容はさまざまです。本人からや、事業主側から支援依頼が入ることもありますが、いずれの場合も双方の同意を得てからサポートを開始します。

 まずは双方にヒアリングを行い、作業に困っている場合は作業現場を観察。プライバシーに配慮が必要なケースでは、別室で相談内容を伺うなどそれぞれの状況に合わせて実態把握を行います。コミュニケーションの問題や、障がい特性の伝え方などの相談については、状況を整理しながら本人と一緒に最適な話し方、伝え方を導き出します。

 障害者職業カウンセラーの米﨑さんは「通常は3か月を基準に支援計画を作成しますが、希望に応じて半年、1年などサポート期間を延長することもあります。障がいのある方と事業所それぞれの思いを丁寧にくみ取り、共通認識を深めることができるよう、双方に寄り添いながら橋渡し役となることが私たちの役割です。」と話します。



就労に不安のある方は、気軽に相談を

 「就職することはもちろん大切ですが、就職後、安定的に長く働き続けられるための道筋をつけることが重要です。」と話す所長の永井さん。

 さらに近年の傾向について「身体的な障がいのみならず、精神的な疾患や発達障害に悩む方も多くご相談にいらっしゃいます。」と分析します。特に精神的な疾患や発達障害の場合、周囲からの理解を得ることが難しく、自分自身の状態を受け入れるまでに時間を要する人も少なくないそうです。

 「まずは自分自身の障がいを正しく知り、現状を受け止めることが第一歩。その上で、将来設計の部分も含めて、最適な仕事を一緒に考えさせていただきます。」と永井所長。「せっかく就職しても、職場で自己発信できず、無理をしすぎてしまう方が大勢いらっしゃいます。ご自身の障がいとの向き合い方、社会・職場との関わり合い方なども含め、未来を見据えて共に考えましょう。」と心強いメッセージをいただきました。



DATA


愛知障害者職業センター(名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見5階)

 ハローワーク(公共職業安定所)、障害者就業・生活支援センターとの密接な連携のもと、障害者職業カウンセラーなどが、就職や職場復帰を目指す障がいのある方の相談、支援を行う機関。また、障害者雇用を検討している、あるいは雇用している事業主の方や、障がいのある方の就労を支援する関係機関の方に対しての支援・サービスを提供しています。

電話:052-218-2380 
時間:午前8時45分~午後5時
休館:土・日曜、祝日、年末年始

愛知障害者職業センター ホームページ

(令和7年12月取材)