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モノを制御する技能を学び  新たな目標へ再スタート
〔組込みシステムエンジニア科(訓練期間:6か月)〕

 『独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構愛知支部 中部職業能力開発促進センター(愛称:ポリテクセンター中部)』では、製造業・建設業を中心に11の訓練コースを設け、求職者支援に取り組んでいます。今回は、自動車産業をはじめ、モノづくりが盛んな愛知県でますます人材ニーズが高まっている分野である『組込みシステムエンジニア科』に注目。具体的な訓練内容や特徴、指導方針などについてお聞きしました。


社会を支える基盤技術=組込みシステム


 「組込みシステム」とは、私たちが毎日のように使用している自動車や電化製品、携帯端末など、モノを動かすために組込まれているソフトウェアのこと。例えば、自動車のエンジンやブレーキを制御するシステム、これも組込みシステムの一つです。
 こうした組込みシステムは、モノを制御する、機能性を加えるなど、モノの付加価値を高めるために必要となる技術です。社会の利便性を支える重要な役割を担っているため、人材ニーズも年々高まっている分野だそうです。『組込みシステムエンジニア科』は、モノづくり企業、IT企業の要望に応え、組込みシステムエンジニアやプログラマーの養成を目指した訓練を実施しています。



現場の開発過程を踏まえた実践的な学び


 訓練の柱は「プログラミング」「電子回路」「マイコン制御プログラミング」の3つです。


プログラミング実習


電子回路実習


マイコン制御プログラミング実習


 「プログラミング」では、仕様書の読み方などの基礎から学び、C言語(コンピュータへ命令を伝えるために必要なプログラミング言語の一つで、幅広いIT分野で使用されている言語)によるプログラミング作成に必要な知識・技術を習得。「電子回路」については、回路図面の読み方から始まり、実際に電子回路を作成し、動作確認を行う一連の手順を身につけていきます。「マイコン制御プログラミング」では、その仕組みを学び、作成手法などを経験しながら習得。これらの基礎を固めたあと、受講生一人ひとりがライントレースカー(検知したラインに沿って自動走行するロボット)の開発に挑戦。システム設計から、はんだごてを使用した電子回路の製作、制御プログラミングまで全工程を手がけて、完成を目指します。


ライントレースカー


電子回路の製作


 取材の当日は、電子回路の実習が行われていました。この実習の課題は、回路図を読み解き、正しく配線を行って電子回路を作成することです。配線に間違いがなければ、意図した数字や文字がディスプレイに表示されます。





 指導にあたっていた職業訓練指導員の東瀧 計太(とうたき けいた)さんは、まず作業手順をしっかりメモしておくようにとアドバイス。受講生は、集中して作業を進め、計測器で動作確認を行っていきます。印象的だったことは、指導員と受講生の距離の近さ。質問しやすい雰囲気があるため、どんどん指導員に尋ねていました。また、受講生同士で課題について話し合っている姿もあり、和気あいあいとした雰囲気が伝わってきます。受講生の年齢層は20代から50代まで様々ですが、年齢の違いを感じさせない仲間意識を感じました。
 東瀧さんに伺うと、受講生のほとんどが専門的な知識を持っていなかったとのこと。短期間で電子回路の作成ができるまでに成長していることに驚きました。「専門用語はもちろん、一からわかりやすく指導していますので、知識がなくても安心してください」とメッセージをいただきました。




企業実習で内定を得た受講生も多数

 本コースの魅力の一つは、企業実習(約1か月半)がカリキュラムに組み込まれていることです。企業実習は、実際の仕事の流れを経験することはもちろん、就職後のミスマッチを防ぐ重要な役割も果たしています。
 企業実習先は、受講生の希望に沿って選定。現在、10社以上の企業と提携しており、実習先企業から内定を得た受講生も数多くいるそうです。
 この企業実習期間中は、指導員が各実習先を巡回訪問し、受講生はもちろん、企業の方からもヒアリングを行い、円滑な実習をサポートしています。
 企業実習終了後は、報告書を作成し、発表会を開催。受講生同士が実習経験を共有し合い、さまざまな現場の実情を知ることで、就職先選びの参考にしているとのことでした。


受講生の声 30代男性

一緒に学ぶ仲間の存在が励みになります

 受講を決意したきっかけは、プログラミングに興味があったからです。実は以前、一人で勉強したこともあったのですが、その時は挫折してしまいました。その点、訓練では指導員の方にわからないことをすぐに質問できますし、一緒に学んでいる受講生に聞くこともできます。自分がどれくらい理解できたのか、どれくらい成長したのか、周りに受講生がいることで客観的に判断できることが、ここで学んでいてよかったと実感することの一つです。
 将来の職業はまだ決めかねていますが、ここで身につけた技術を活かして再就職につなげていきたいと思っています。


指導員の声 電気・電子系 職業訓練指導員 東瀧 計太さん


継続は力なり 自分の武器を身につけよう

 組込みシステム分野の技術は、すぐに習得できるものではありません。失敗を経験しながら学び、技術を身につけていく姿勢が大切になります。私は訓練を通して諦めずに続けていく力を養ってほしいと受講生に伝えています。
 受講生のほとんどがプログラミングや電子回路などに関する知識のない方ですが、訓練終了後には、再就職を実現してきました。
 組込みシステムに興味のある方は、ぜひコース説明会にご参加ください。



修了生の声 20代男性



訓練での学びが今の仕事に直結

 現在、IT業界の企業でナビゲーションシステム開発部門に所属。エンジニアとして、ソフトウェア開発や修正、設計資料の整理、お客様との調整業務などを担当しています。訓練を受けてよかったことは、C言語を用いた組込みプログラムの基礎、制御プログラムの作成・デバッグ(エラーや欠陥を見つけ修正する作業)技術が身につけられたことです。今の仕事に活かされていますし、講師の方々の経験に基づく指導は参考になりました。


 就職のきっかけは企業実習です。面接では訓練での学びを具体的に伝えることを意識しました。
 今後の目標は、まず技術力をさらに高めること。将来的には業務改善に関わり、職場全体の品質向上に貢献したいと考えています。


事業者の声 アズソフト株式会社

実践的な訓練内容が事業内容とマッチ

 当社は、ソフトウェアの開発を通じて、「機械」「人」「情報」のリレーションを推進し、社会に貢献していくことを目指す企業です。
 今回、採用した修了生にはC言語を用いた開発業務に携わってもらっています。職業訓練で学んだ組込みプログラムの基礎がしっかりと活かされているように思います。
 採用にいたった理由は、受けてきた訓練内容が当社の事業内容とマッチしているからです。また、企業実習という実践的な訓練がコースに組み込まれていることにも魅力を感じています。この実習経験が、就職後の離職率の低さにもつながっているのではないでしょうか。
 会社としては、素直で真面目な人材と評価しています。教えたこと、指示されたことをコツコツとやり続けることができていますので、今後は自分から判断して積極的に作業を進めていけるようになることを期待しています。将来は、会社の中核をなす人材へと飛躍してもらいたいです。

アズソフト株式会社 ホームページ



DATA


中部職業能力開発促進センター
(ポリテクセンター中部)
所在地:愛知県小牧市下末1636-2
電話:0568-79-0512



 ポリテクセンター中部は、再就職を目指す求職者の方に向けて、6〜7か月間の職業訓練を無料(テキスト代等は必要)で実施している厚生労働省所管の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する職業訓練校です。訓練は「機械」「電気・電子」「居住」の3つの分野にわかれており、現在は11のコースを開講。尾張地域を中心に、愛知県内外から多くの方が学びに訪れています。技術を身につけて、次のステップへ進むための力をしっかりと養える場所です。


ポリテクセンター中部 ホームページ

(令和7年8月取材)