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全国でも珍しい陶磁器製造の訓練を実施
陶磁器製造科:短期課程(1年)

 千年の歴史を誇る瀬戸焼の生産地として全国的にも有名な愛知県瀬戸市。この地に拠点を置く名古屋高等技術専門校 窯業校は、地場産業の特色を活かした訓練等により陶磁器産業の担い手を育成することを目的とした訓練校です。
 訓練科は、成形作業を中心とする『陶磁器製造科』と、デザイン企画を中心とする『陶磁器デザイン科』の2科があります。
 今回は、陶磁器製造科をピックアップ。実習におじゃまし、訓練内容についてお聞きしました。



現場に近い環境の中で、幅広い技術を習得


 陶磁器分野の訓練科を有する訓練校は、全国でもわずか2校(名古屋高等技術専門校窯業校と京都府立陶工高等技術専門校)。その1校である窯業校には、県内はもちろん、全国各地から訓練生が集まっており、年齢層も20代から60代まで幅広い方が訓練を受講しています。
 陶磁器の製造工程は、粘土の調整からはじまり、成形、仕上げ(乾燥・削り)、素焼き(仮焼き)、下絵付け、釉薬調合、施釉、焼成(本焼き)、最後に製品の検査です(本焼成のあと、上絵付けを施し、上絵焼成を行う場合もあります。)。
そのため、窯業校では、窯業の基礎知識から各工程における知識について座学で学ぶとともに、粘土づくりから、成形作業(手ろくろ、手造り、鋳込み(いこみ)、動力ろくろ)、原型(鋳込みの型を製作するための基となるもの)、釉薬(ゆうやく)調合、施釉(せゆう)、デザイン実習、焼成、絵付けなど一連の陶磁器製造工程を踏まえた実習を行っています。
 このうち、鋳込みとは、液体状の粘土を石膏の型に流し込み成形する手法。瀬戸の良質な土は流動性に優れ、この手法により、繊細な造形を可能にしたことで美しい人形などの製品(セトノベルティ)が製造され、海外に多く輸出され高い評価を受けてきました。地場産業で培われてきた技術を活かす訓練として取り入れられています。
 「当校の特色は、現場に近い設備が揃っていること」と話す指導員の深谷和紀さん。「土練機やろくろ、ガス窯、電気窯などの設備が整い、現場に近い環境で訓練できることが、就職先での作業に早く慣れることにつながっています。ろくろの種類や台数も充実していますので、何度も反復練習できるところも強みです」とのことでした。


土の種類により使い分ける土練機(どれんき)


実習で使用する粘土


鋳込み成形のための石膏の型


絵付けを施した花瓶



 陶磁器は、土の種類、釉薬の種類、焼成方法によって、仕上がりが異なります。訓練生は多くのテストピースを参考にし、それぞれ製作するものの完成イメージを頭に浮かべ、土(白土や赤土など)と釉薬の組み合わせを考えて実習に取り組みます。




土の種類と焼き方、釉薬の組み合わせにより様々な出来上がりをイメージできるテストピース



繰り返してつかむ土の特性



 訪問した際は、ろくろ成形の実習中でした。この実習の目的は、一定の品質の製品を数多くつくれるようになることです。まずは湯呑みからはじまり、ご飯茶碗、皿、徳利など、成形する手の動きがシンプルなものから複雑なものへと進めていきます。最初は、皆が同じ器を成形しますが、訓練を重ねていく中で自分が極めたいものに合った形状の器の成形にステップアップしていきます。


 今回、訓練生はご飯茶碗などを製作していました。ろくろを回し成形作業を行っている人、外径や高さを手作りの道具で確認しながら調整している人、茶碗の高台(器の裏側にある輪状の台)を削っている人と、それぞれの工程に応じてろくろのスピードやヘラの角度を調整しながら作業を行っています。


高台を削り出す作業



 茶碗の場合、底の厚みを整える作業が難しいそうです。厚すぎれば重くなってしまい、薄すぎれば底が抜けしまう。その加減が大切とのことでした。また、深谷さんは、「まずは土の繊細な特性を経験の中で感じ取ってほしいです。乾燥する前の器は、持ち方、触り方次第で変形したりします。こうした失敗は誰もが経験すること。」と話します。






土の繊細さを感じ取ろうと、指先を丁寧に使って作業に取り組む訓練生



 そして、製造過程において土の乾燥の見極めが重要となります。粘土の乾燥は、気温や湿度、風の影響を強く受けます。乾燥が適切でないと、柔らかすぎて削れない、固すぎて削りにくい。その原因を考えながら、乾燥させる時間の長さなどを検討していくことも訓練の一環。何度も試行錯誤を繰り返して訓練生は、言葉で表現できない感覚をつかみ取っていきます。
 もう一つのポイントは土の収縮性。茶碗を焼成すると焼く前より1割ほど収縮するとのこと。焼き上がりをイメージして、逆算し訓練生は成形作業を行っていきます。




乾燥の工程



現場で求められる作業のポイントを伝授


ガス窯


電気窯


 続いて窯入れの様子を見学。今回は、素焼きの窯入れです。ガス窯と電気窯、それぞれの窯で焼くための準備を訓練生同士で協力して行っていました。器の種類や大きさ、高さなどに応じて置く位置を決め、器を並べる台の板を支柱で何層にも積み上げます。素焼きの場合は、複数の器を重ねて積むことが可能です。この重ね方や置き方のポイントを経験の中で習得していきます。


ガス窯での素焼き焼成準備。積み上げる台を安定させるため3本の支柱で支える。
割れないような器の重ね方や、窯の壁に当たらないような置き方に注意して窯入れする。



 こうして素焼きが終わった後、調合した釉薬をかけ、焼成へと進んでいきます。焼成で大切になるのは温度管理です。窯の中の位置による温度差、窯の設計による火の回り具合の違いなどについても理解しておくことが必要です。



 全国でも珍しい陶磁器分野の訓練校として、陶磁器を作り上げるというものづくりを、製造工程の始まりである土の調整から学び、体系的な実習により数多くの工程の経験を積むことで、土の性質などを感じ取りながら専門的に学べるところであることが、とてもよく分かりました。



【めざす主な職業】


  • 陶磁器製造工
  • 窯業絵付工
  • 施釉工
  • 窯業原料工
  • 陶芸教室スタッフ


訓練生の声(20代 男性)​


「ていねいに指導していただけるので心強いです」
 入校のきっかけは、陶磁器と関係のない職業に就いていましたが、家業が鋳込みによる陶磁器製造業を営んでいて、将来について考えはじめたことです。陶磁器は身近なものでしたが、専門的な知識はまったくなく不安もありましたが、基本的なところから細かく教えていただけるので助かりました。失敗した原因がわからない場合も、私が理解できるまでマンツーマンで指導してもらえました。訓練生同士でアドバイスし合い、試したことができたときなどは、成長を実感できることが楽しいです。陶磁器に関連する分野の仕事に就くことを目指し、色々な考えを吸収していきたいです。



指導員の声(指導員 深谷 和紀 さん)


「まずは一歩を踏み出してほしい」
 陶磁器製造には、自分で取り組んでみなければわからないことがたくさんあります。まずは地道に経験を重ね、それぞれの訓練生がやりがいの感じられる職業をめざしてほしいと思っています。焼き物に仕事として携わりたい人であれば、未経験で自信が無く迷っている人も丁寧にサポートするので安心してください。興味があって悩んでいるようでしたら、是非チャレンジしてみてください。




修了生の声(30代 男性)


 訓練終了後、圧力鋳込みの製陶所勤務のため、土を触る機会がなかったのですが、陶芸教室の補助業務を担うこととなりました。久しぶりに土に触れることから、求められる水準で作業できるか不安でしたが、体が覚えていたようで無事に菊練り、紐作り、その他の作業ができました。一年間の基礎的な訓練が無駄ではなかったと改めて実感できました。



DATA

 愛知県立名古屋高等技術専門校 窯業校(瀬戸市南山口町538番地)

訓練科

  • 陶磁器製造科(短期課程・1年)
  • 陶磁器デザイン科(短期課程・1年)
  • 窯業に関連する在職者訓練も実施しています。
  • 訓練生作品の展示即売会を、毎年2月に開催しています。

ステップアップへ導く ~窯業校の魅力~

■授業料無料・・・短期課程は授業料が無料。
■知識・経験がなくてもOK・・・経験豊富な指導員が、一から丁寧に指導。
■実技重視のカリキュラム・・・年間1,400時間の訓練量。一人一台の実習装置を使用できる環境で経験を重ね、実践力アップ。
■実務に役立つ技術を取得・・・就職活動でスキルをアピール。仕事をしていく上での技術の証明。
■就職を最後までサポート・・・ハローワークと連携した支援や、指導員による個別相談など充実のサポート。専門校が企業から直接受けた求人もあり。

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