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設計・施工・診断まで——建築をまるごと学ぶ
〔住宅CAD・プランニング科(訓練期間:6か月)〕

 『中部職業能力開発促進センター(愛称:ポリテクセンター中部)』では、製造業や建設業など幅広い分野で11の訓練コースを設け、求職者の再就職を支援しています。今回は、住宅の設計から施工、建物診断まで建築を総合的に学べる『住宅CAD・プランニング科』を取材。科の特徴や実践的な訓練内容、建築業界で求められる人材育成への取組について伺いました。


建築の総合力を身につける実践カリキュラム

 「住宅CAD・プランニング科」では、6か月の訓練を通して住宅建築に関する幅広い知識と技術を身につけ、建築業界で活躍できる人材の育成を目指しています。受講生は建築業界未経験の方も多く、前職は販売、受付、保険業、飲食業、製造業など様々です。年代も20代から60代までと幅広く、中には、前職が電気工事士で建築図面を読めるようになりたい方や、前職が建築士でCADの技術を身につけたい方が受講するケースもあります。

 この科の特徴は、CADによる図面作成だけでなく、住宅づくり全体を総合的に学べることです。まず、建築物の構造や部材名、建築基準法など、建築に携わる仕事に共通して必要な基礎知識を学ぶとともに、手書き製図を通して図面を読み解く力を身につけます。続いて、建築業界で多く使われている種類のCADの基本操作を習得し、木造住宅を中心とした図面作成や、建物を立体的に描いた完成予想図(パース)の作成にも取り組みます。さらに、測量機器を使った実習で測量の手法を学ぶとともに、木造の模擬家屋を解体しながら木構造への理解を深めます。

 訓練の中盤では、木造平屋建ての模擬家屋を実際に加工・組立てから内装仕上げまで手がける施工実習も実施。その後は、建築法規や耐震性、住環境の基準などを踏まえながら住宅の設計プランをまとめ、図面や完成模型を作成する一連の流れを習得します。最後には、実際の診断業務でも使われる機器を使い、既存建築物の劣化状況や住環境を見極める診断実習も行います。


建築の一般知識を学ぶ


CADによる建築図面の作成


建築測量・木構造を理解する


木造住宅の施工法を理解する


木造住宅の計画を学ぶ


建築物の劣化診断


 職業訓練指導員の平 和基(たいら かずき)さんは、「指示通りに図面を描けるだけではなく、施工の工程を理解し、『実際の現場ではここが大切』と自分で考えながら図面を描ける人が、現場ではより活躍できると思います。」と話します。そのため施設内には実物大の模擬家屋を設置し、座学だけでは得にくい実践的な学びができる環境を整えています。


職業訓練指導員の平 和基さん


 修了後は、CADオペレーターや施工管理、現場監督のアシスタント、大工、建築関係の事務・受付、住宅営業など、学んだ知識と技術を生かして幅広い職種での活躍を目指すことができます。


「クロス貼り実習」——実際の施工を通して、建築への理解を深める



 今回取材したのは、木造家屋の施工実習の仕上げにあたる「クロス貼り」。使用するのは、受講生たちが施設内に建てた実物大の模擬家屋です。材料の加工から組立てまで行い、その内装の仕上げとして、壁紙を貼っていきます。

 授業ではまず、指導員がクロスの採寸から裁断、糊付け、貼り付けまでの一連の作業を実演。その後、受講生たちは洋室班と和室班に分かれ、立てた作業計画に沿って施工に取りかかりました。壁一面にクロスを広げ、位置を合わせながら慎重に貼り進めていきます。特に難しいのが、柱や壁が交わる角の部分。少しのずれや力加減が仕上がりを左右するため、受講生たちは互いに仕上がりを確認したり、クロスを押さえるのを手伝ったりしながら、作業を進めていきました。

 受講生の一人は、「角の処理が難しくて、少し爪が当たっただけでもクロスが破れてしまうので、とても気を使いました。」と振り返ります。和室では柱を壁の外側に見せる造り方のため、洋室に比べてクロスを貼る場所が細かく分かれ、より繊細な作業が求められるといいます。見ているだけでは分からなかった職人の技術や仕事の難しさを、自分の手で施工することで体感していました。



 実物大の模擬家屋を使うことで、図面やCADだけでは理解しにくい建物の構造や施工方法を、実際に体験しながら学べることも、この実習の大きな特徴です。「壁の構造や柱、下地の位置など、実際の建物を作りながら『こうなっていたのか』と納得できることが多くありました。」と話す受講生もいました。

 指導員の平さんも、受講生が自ら手を動かして施工することの大切さを強調します。「図面で描いたものが、実際にどのような工程を経て形になるのか。それを体験することで、図面と現場がつながり、建築への理解が深まっていきます。単に施工技術を身につけるだけでなく、現場を理解した上で設計や図面作成ができる力を養うことも、実習の大きなねらいです。」と言います。

 クロス貼りだけでなく、天井の取り付けや畳の設置なども行い、実習が終わるころには模擬家屋の室内は本物の住宅さながらの仕上がりに。完成した部屋を前に「泊まっていきたい。」という声も上がり、自分たちの手で一つの空間をつくり上げた達成感が伝わってきました。




 実習では施工技術だけでなく、安全確認や作業後の清掃、道具の整理整頓など、現場で欠かせない基本姿勢も重視されています。クロス貼りなどの作業と並行して、指導員からは施工のポイントや安全に作業するための注意点も伝えられ、実際の現場で求められる実践力も身につけます。



受講生の声(Nさん・50代・女性)

 私は20年以上、建具や家具の製作から現場での取り付けまで経験してきました。職場で以前から「作る人もCADが描けた方がいい。」と言われていましたが、独学で身に付けるのは難しく、「住宅CAD・プランニング科」を受講しました。
 受講前はパソコンやCADについていけるか不安でしたが、訓練を通してCADで図面を描けるようになりました。長年ものづくりの現場にいる中で、図面に本当は欲しい寸法が入っていないと感じることがありました。ものづくりをする側の人間が図面を描くと、書き方が少し違ってくるように思います。作り手として、自分でも図面を引けるようになったことは大きな収穫です。 
 また、建具や家具という一つのパーツだけを見ていた頃には気づけなかった、住宅全体のつながりが見えるようになったことに、自分自身の成長を感じています。
 これまでの建具・家具製作の経験に、今回学んだ建築全体を見る視点やCADの知識を加え、ものづくりの幅をさらに広げていきたいと思っています。


受講生の声(Kさん・30代・女性)

 私は15年ほど家具製造の仕事に携わり、家具の組み立てや仕上げ、引き出しや扉の取り付けなどを行ってきました。次第に、工場で家具を作るだけでなく、現場での施工や空間が完成していく過程にも関わりたいと思うようになり、建築を一から学べる「住宅CAD・プランニング科」を受講しました。
 CADはまったくの未経験でしたが、訓練を通して建築図面を一から作成できるようになりました。建築法規では、建築基準法をはじめ建ぺい率や容積率、高さ制限など覚えることも多く苦戦しましたが、先生方に質問しながら学ぶことで、住宅がどのようなルールや考え方に基づいて設計・施工されているのか、少しずつ理解できるようになりました。
 今後は、身につけたCADの技術と家具製造の経験を掛け合わせ、製作だけでなく施工の現場にも関わる仕事に挑戦したいです。小学校の卒業アルバムに書いた『自分で家を建てる』という夢にも、少しずつ近づいていけたらと思っています。




手厚い就職支援——訓練中から修了後まで続くサポート

 ポリテクセンター中部では、技術を身につける訓練だけでなく、再就職に向けた支援にも力を入れています。各クラスの担任が受講生と定期的に面談を行うほか、就職支援アドバイザーを交えた三者面談や企業説明会などを実施し、訓練期間中から一人ひとりの希望に合わせた就職活動をサポートしています。

 支援は訓練の修了と同時に終わるわけではありません。修了後も3か月間のフォローアップを行い、個別に相談できる体制を整えています。指導員の平さんは、ものづくりが好きな方や建物・住まいに興味がある方はもちろん、建築分野で専門的な知識や技術を身につけたい方、これまでの経験に新たなスキルを加えてキャリアの幅を広げたい方にも学んでほしいと話します。「まずは説明会で実際の訓練の様子を見てください。一人ひとりが安心して学び、再就職につなげられるよう、私たちが全力でサポートします。」



修了生の声(Wさん・30代・男性)

 前職は倉庫業でしたが、未経験の分野に挑戦したいと考え、6か月間で新しい分野の知識や技術を学びながら、就職活動にも取り組める点に魅力を感じてポリテクセンター中部へ入所しました。
 訓練ではCADソフトの操作とともに建築の技術を習得、現在は建設現場の管理を担当し、訓練で学んだ作業前の危険予知活動など、安全管理の知識が今も役立っています。
 未経験からの就職活動には不安もありましたが、企業説明会をはじめとする就職支援を活用し、建設分野に就職することができました。求人票だけではわからない企業の雰囲気を知ることができ、就職活動がしやすかったです。気になる企業に事前にコンタクトを取れる点も、ポリテクセンター中部の強みだと思いました。
 現在は、工程管理や安全管理に加え、写真管理や材料管理にも取り組んでいます。現場では、様々な職人と関わる中で得た知識や経験を活かし、今後は、施工管理の資格を取得して、活躍の幅を広げていきたいです。


採用企業の声(JAGフィールド株式会社 採用戦略本部 堀田  直さん)

 JAGフィールド株式会社では、ポリテクセンター修了生が複数名活躍しています。未経験者でも基礎から学べる研修や、CAD・BIM(建物の情報を3次元データで管理する設計手法)研修、資格取得支援制度を整えており、施工管理や設計など幅広い分野で成長できる環境があります。Wさんは、仕事に真摯に取り組む姿勢が現場でも高く評価されています。今後のさらなる成長にも期待しています。



DATA


独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構愛知支部 中部職業能力開発促進センター(ポリテクセンター中部)

所在地:愛知県小牧市下末1636-2
電話:0568-79-0512



 ポリテクセンター中部は、再就職を目指す求職者を対象に、6~7か月間の職業訓練を実施している職業訓練施設です。厚生労働省所管の同機構(JEED)が運営し、受講料は無料(テキスト代などは自己負担)。「機械」「電気・電子」「居住」の3分野11コースを開講し、実践的な訓練を通して再就職に必要な知識と技術を身につけることができます。

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(令和8年6月取材)