あいちの労働あれこれ

働くことの意義を知り 輝く自分の未来を描く




連合愛知 事務所


 『連合愛知(日本労働組合総連合会愛知県連合会)』は、『連合(日本労働組合総連合会)※』の地方組織の一つとして、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け、地域に根ざした労働運動に取り組む県内56万人の労働者で構成される労働組合です。
 働く人の労働条件や職場環境の維持・改善という労働組合員向けの活動に加え、「働く人や地域の頼りになる存在」を目指し、環境美化やボランティア活動といった社会貢献にも力を注いでいます。
 今回は、連合愛知の社会貢献活動に注目し、若者の労働教育の推進を目的に連合愛知と愛知県立大学が協同で開催する『大学寄付講座』を紹介します。
※全国で700万人の労働組合員が加盟する労働組合のナショナル・センターの一つです。


愛知県立大学寄付講座とは・・・






寄付講座 講義風景


 この寄付講座は、連合愛知がこれから社会に出る大学生を対象に、働く意義やワークルール、労働組合の役割などに関する知識を高めることを目的とし、構成組織および関係団体の協力のもと全15回の講座を愛知県立大学において開講するものです。
 令和元年度からスタートしたこの講座は6年目を迎え、毎年度、学生の声や大学の要望、時代の変化に応じたテーマを取り入れリニューアルしています。受講した学生からの評価も高く、講義を通じて興味を持った企業や業界へ就職するケースも見られます。


寄付講座担当者からのメッセージ
連合愛知 広報・教育局長  大脇 匡人さん



 大学寄付講座は、労働教育事業として取り組んでいる活動の一つです。令和6年度は、履修生に海外留学する学生が比較的多いことから、アジア圏の海外労働事情を学ぶ講義を新たに設けるなど毎年度見直しをはかっています。
 令和6年度は過去最多の履修申し込みがあり、138名が受講しました。
 学生アンケートでは、「働くこと、労働組合のイメージが変わった」と95%以上の回答があり、有意義な講義になっていると判断しています。学生からは「もっと様々な業種について知りたい」という要望がありますので、大学とも相談しながら次年度に活かしていきたいと考えています。


大学寄付講座ピックアップ(概要紹介)

■第1回(令和6年10月7日)
 (1)テーマ:働くことを軸とする安心社会の実現のために-連合愛知会長講話-
    講師:連合愛知  会長 可知 洋二さん

 初回は前後半による2部制で2名の講師を招いて行われました。
 最初に登壇した可知会長は、冒頭、講座の目的について説明。そして、労働組合や連合・連合愛知の活動内容を紹介。スローガン『まもる・つなぐ・創り出す』のもと、労働相談をはじめ、ジェンダー平等推進、春季生活闘争、最低賃金などの取り組みについて語りました。
 また、ワークルールとして、有給休暇の取得やハラスメントなどについて解説。「困ったことがあれば連合愛知に相談してもらえれば力になる」と伝え、次の講師へとバトンタッチしました。



 (2)テーマ:多様な働き方を考える-労働行政の立場から-
    講師:厚生労働省  愛知労働局長  小林 洋子さん



 次に登壇した小林局長は、まず労働局の役割についてふれ、『働く』に関わる総合機関として、働いている期間はもちろんのこと、働く前のマッチングや離職後のサポートも担っていると説明しました。
 また、愛知県内の雇用情勢、労働時間、年次有給休暇取得率のほか、管理職に占める女性労働者の割合や、男女間賃金格差のデータを紹介。労働局が取り組む賃金引上げのための環境整備やリ・スキリング (新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること)、女性活躍や多様な働き方のための支援について解説しました。


■第8回(令和6年12月2日)
 テーマ:海外労働者事情や働き方の違いを学ぶ 異文化理解-タイの経験と学び-
 講師:デンソー・インターナショナル・アジア Senior Vice President(SVP) 末松 正夫さん



 このテーマは、海外勤務を視野に入れた学生たちに向けて、海外勤務のやりがいや楽しさ、働き方の違いなどを学ぶ機会として今年度新たに設けられました。 
 末松SVPがまず語ったことは、現在の若者の意識や行動の変化についてです。自分が海外勤務を経験した頃に比べると若者のチャレンジマインドが後退しているようにみえ、活躍する可能性を自ら放棄してしまっていると話しました。
 この他、日本人とタイ人の国民性や考え方の違いから得た教訓にふれ、異文化の理解、尊重の重要性を語っていました。


■第14回(令和7年1月22日)
 テーマ:寄付講座の意義・働くとは-まとめ-
 講師:公益社団法人  教育文化協会  理事長 相原 康伸さん

 今回は、これまでの講義の総括ということで取材に伺いました。
 相原理事長は講義の中で、国際社会における課題の本質を見るための解像度を高めることが必要と発言。欧米やグローバルサウスなど、様々な価値観、主張がある中で、「日本の切り札となるキーワードを一緒に探していきましょう」と学生たちに語りかけました。そして今後、社会や世界で働く際の重要なこととしてグローバルシティズンシップについて解説。人種や言語、文化などの違いを越えた敬愛が、社会を形づくっていく上で大切と話しました。学生たちは熱心にメモを取り、真剣に耳を傾けていました。





 また、働くとは「社会に参加し、労働を通じて人々を支える立場になること」と説明。その中で労働組合の役割とは「一人一人の可能性を最大限に活かすこと。そして、健全な労働市場、健全な経済、健全な社会をつくることに寄与すること」と話しました。こうした言葉を受け、学生たちは働くことへの意識を改めて自らに問い直していたようです。深く考えていることが表情から伝わってきました。




 さらに、日本における様々な課題について解説。相対的貧困の話では、母子家庭の収入格差、労働形態や職業による賃金格差を取り上げ、労働組合は「負の連鎖を断ち切るために正社員の賃金上昇、そして非正規雇用の賃金格差を縮めることを目指している」と語られました。
 また、ジェンダーギャップの話の際には、女子学生たちがデータを注視している姿が印象的で、身近な課題と感じていたようです。


 最後に、今までとは異なった新たな働き方を考える時代になっていることについて、学生たちに「ありのままの自分を素直に認めること。他者と比較する必要はありません」と助言がありました。そして「様々な働き方があり、その人々の努力で社会が支えられていることを実感することが重要」と語り、講義を結びました。
 学生にとっては、自分の将来について考え、社会のあり方について考える貴重な時間になったようです。


受講した学生たちの声

「自分自身、就職先に迷っており、何かヒントがないかと思い受講しました。様々な業種の方たちの講義を聞くことができ、自分のやりたいこと、自分の将来を考えるよい機会になったと感じています。」

「仕事をしながら妊娠を経験した人の話が印象に残っています。私も仕事をしながら子育てをしたいと思っていたので大変参考になりました。自分のキャリア設計が明確になったように思います。」

「毎回新たな発見があり、働くことの具体的なイメージが持てるようになりました。大学生の今、失敗を恐れず様々なことに挑戦することの大切さを知ることができましたので、今後の人生に活かしていきたいです。」


連合愛知ホームページ