あいちの労働あれこれ

ものづくりのエンターテイナーとして“ワクワク”を生む会社づくり


常滑オフィスに設置されている円筒型のデジタルサイネージ


 製造業では、業務内容の特性や勤務スタイルに対する先入観などから、女性従業員の採用に苦戦している企業も少なくありません。そんな中、刈谷市に本社を置く株式会社テルミック(以下、「テルミック」という。)では、社員の約7割を女性が占め、社員一人ひとりがそれぞれのライフステージに合わせた働き方を実現しています。職場環境の改善、働き方改革、女性活躍推進に関する取り組み強化に比例するように、業績面でも右肩上がりの成長を続けているテルミック。
 今回は飛躍の源となっている、職場環境改善などの具体策について代表取締役社長の田中秀範さんにインタビュー。その効果や今後の展望についてお話しを伺いました。



年商400万円から63億円へ躍進


 金属・機械・精密部品の加工などを手掛けるテルミック。自動車や航空機、産業用機械など、多分野にわたる製造機械・設備メーカーへ製品を納品しています。

 中部国際空港セントレアから程近い常滑オフィスへ足を踏み入れると、おしゃれなカフェカウンター、カラフルなインテリアが並ぶ休憩スペース、頭上でくるくると回る円筒型のデジタルサイネージなどで空間演出が施され、製造業の会社であることを忘れてしまうような開放的で明るい雰囲気に包まれています。


常滑オフィスのラウンジ


 創業者である社長の田中さんは、21歳の時に個人で鉄工所を創業。工業高校時代に身に付けた技術力や独自の発想力を糧に、取り引き先の信頼を徐々に獲得していきました。そして平成2年の創業当初、約400万円だった年間売上は、令和6年に約63億円を記録。現在は、全国およそ1,600社以上の企業と取り引きをしています。
 この成長の背景には、1つのターニングポイントがありました。


代表取締役社長の田中 秀範さん



内勤営業への転換とシステム構築で働き方改革


営業部門は全員がオフィスでデスクワーク


 成長のきっかけとなったのが、平成20年前後から本格的に取り組みを始めた女性の積極採用と、それに伴う職場環境改善です。重労働、不規則な就労時間といったイメージを抱かれがちだった製造業において、人手不足は深刻な課題であり、田中社長はその課題解決のためには女性の活躍が不可欠であると考えていました。

 そこで改革の軸として着手したのが、外勤営業を撤廃し、内勤営業に切り替えるという施策でした。誰もが負担なく働けるよう、外に出ない独自の営業スタイルへ転換。残業をしない働き方を定着させ、社員一人ひとりの生活スタイルや希望に合わせて、勤務時間を柔軟に設定できる制度を整えました。

 内勤営業による好影響は、業績にも直結。顧客からの問い合わせやオーダーへ即座に対応ができるようになり、スピーディーな見積もり提示で受注率向上、スムーズな社内連携で作業効率アップ、外出に費やしていた時間とコストの削減など、様々な面での効率化・省力化が可能に。顧客満足度も格段に高まりました。

 加えて、製造現場の改革も推進します。田中社長は「部品加工においては旋盤、フライス盤、焼入などいくつもの工程があり、一般的に、一人前として作業ができるようになるまでに5~10年を要します。そこで、独自のシステム構築による徹底したDX化(デジタルを活用して業務を改善し、新しい仕組みづくりやサービスにつなげること)、RPA化(データの入力や取り出しといったコンピューターで行う単純作業、定型作業の自動化)、IoT(あらゆるモノをインターネットでつなぐ技術)を導入。業務工数を大幅に削減し、誰が担当しても少ない負担で高精度の作業ができるようになりました。」と話します。



遊び心あふれる仕掛けでモチベーションアップ


工場棟のエントランスにはUFOキャッチャーを設置
来社した方も楽しめる


 内勤営業スタイルへの移行、独自のシステム構築による省力化の実現といった業務改善と並行して、田中社長が注力したのは「製造業×ワクワク」をコンセプトにした、遊び心あふれる職場づくりです。"ものづくりのエンターテイナー"として、楽しさと働きがいを両立させています。


スタッフの働きぶりをポイント換算して「見える化」することで
モチベーションを向上


進捗や出荷状況をリアルタイムで表示


 社内のいたる所に設置された巨大なデジタルサイネージの画面には、まるでカジノを思わせるような装飾が施され、多くの数字が並び、目まぐるしく数値が変動します。これは、製造工程の進捗や受注状況、納入状況、部署や個人ごとの売り上げ成績など、必要な情報がリアルタイムで表示される仕組みです。

 こうしたゲーム感覚を取り入れた“見える化”施策は、工程確認や時間管理のために社内や部署内での情報を可視化する機能はもちろんのこと、仕事に向き合う上での高揚感の創出にもつながりました。会社が1分1秒単位で成長している動きを社員全員で分かち合う一体感や、社員一人ひとりにスポットを当ててモチベーションを上げるなどの役割も担っています。

 また、常滑オフィスには、工場に導入したものと同型のアーム型協働ロボット(安全柵なしで人と同じ空間で一緒に作業できるロボット)を組み合わせた全自動コーヒーマシンを設置しました。スムーズな動きで、あっという間にラテアートが完成。社員が自由に利用できるほか、取り引き先や見学者などのおもてなしにも活用し、会話の盛り上げ役としても重宝しているそうです。


ラテアートを作るアーム型協働ロボット


希望の画像データを機械に読み込ませて設定すると
その絵柄のラテアートが完成


 デジタルサイネージやロボットなど、社内で活躍する遊び心あふれる様々な機器は、テルミックの商品としてすべて販売もしています。



工場内にもカフェカウンターを設置



 こうしたユニークな施策は設備面にとどまらず、制度面の充実にも表れています。


テルミックのユニークな福利厚生

・Eat in Telmic(定時退社後、社内で行う食事会や懇親会に対して1人1,500円を補助)
・アクティブライフ手当(資格取得や自己研さんのみならず、心身の健康維持のためのジムや美容などの費用も会社が負担)
・サバティカル休暇(自身のスキルアップやリフレッシュのために取得できる最長6カ月の長期休暇)
・子育て応援サポート手当の付与(第3子以降には出産時に100万円支給)
・リファラル手当(紹介した家族や友人・知人が入社し、一定期間勤務すると紹介者に手当が支給される制度)
・シャッフル制度(希望する拠点で一定の期間就労できる、拠点間の異動制度) など


 入社3年目の営業職の社員は「前職では外回り中心の営業でしたが、テルミックに入社後は内勤で残業もほとんどなく、家族と過ごす時間が増えました。」とワークライフバランスの充実を実感している様子。また入社3カ月目の社員は現在、シャッフル制度を活用し、常滑オフィスに出勤中。「普段は名古屋駅前オフィスにいますが、製造機能を備えた拠点を経験することで、業務全体の仕組みや製品の流れを体感できました。今後もアクティブライフ手当など、いろいろな制度を活用したいです。」と話します。

 こうした職場環境づくりや充実した福利厚生の整備は、単なる待遇改善が目的ではありません。その根底には、「一人ひとりが誇りを持ち、社員が家族や友人に自慢できる会社にしたい」という田中社長の強い思いがあります。そのために重視しているのが、自由で風通しのよい環境です。社員が自分らしく働き、豊かな人生を実現できてこそ、誇れる会社になると考えているからです。




国内外から年間2,700社以上が見学に訪れる理想の環境

 こうしたテルミックの独創的な取り組みは、社会にも広く知られるようになりました。DXを活用した新しい製造現場のあり方を学びたいという同業者のみならず、職場環境改善、女性の活躍推進、社員の満足度向上などを目指す異業種からも注目を集め、令和6年には2,729社が会社見学のために来社。国内外の企業から日々、依頼や問い合わせが入ります。



てるみちゃんグッズは会社見学のお土産としても人気


 さらに、次世代を担う子どもたちにも製造業の面白さを伝え、興味を抱いてほしいとの思いから、同社のオリジナル招き猫キャラクター「てるみちゃん」のグッズ開発・販売にも積極的。田中社長は「てるみちゃんをきっかけに当社を知ってもらい、『このキャラクターの会社はどんなものを作っているんだろう』と興味を持ってもらえれば、製造業に目を向けるきっかけになるのでは。」と話します。
 「これからも“製造業×ワクワク”をキーワードに新しいことへのチャレンジを続けます。そして、社員やその家族、関連企業の皆さまはもとより、製造業や当社に関わるすべての人を笑顔にする会社であり続けたい。それが最大の目標です。」


DATA

株式会社 テルミック(本社:愛知県刈谷市小垣江町永田47番地)



 平成2年、有限会社テルミックとして刈谷市青山町で創業。平成13年に株式会社に商号変更、平成15年には現在の本社がある刈谷市小垣江町に工場兼事務所を新設しました。平成29年にはりんくう常滑営業所、りんくう常滑検査・出荷センター開設。職場の環境改善やDXへの取り組みが評価され、平成30年「あいち女性輝きカンパニー」として認証を受け、名古屋商工会議所主催「NAGOYA DX・生産性向上アワード」審査員特別賞、船井総合研究所による企業表彰制度「サステナグロースカンパニーアワード2025」DXインパクト賞など受賞歴多数。

株式会社テルミック ホームページ

(令和7年11月取材)