『雇用のミスマッチ』 連載第1回
名古屋学院大学経済学部准教授の菅原です。今回から4回の連載で「雇用のミスマッチ」について、求職者の方、企業の採用担当者の方々に労働経済学の観点から労働市場の仕組みなどを分かりやすく解説したいと思います。
本コラムのタイトルである「雇用のミスマッチ」とはどのようなものでしょうか。職探し中の労働者(求職者)が希望する労働条件と、企業が提示する労働者の条件(求人)が一致(マッチ)せず雇用が生まれないというのが教科書的な説明ですが、第一回目のこのコラムではもう少し易しい解説をしてみようと思います。
まずは日本の労働市場のデータを観察してみましょう。現在働いている就業者の数は男女計で6760万人、働く意思はあるが現在職探しなどで失業中の人は182万人います。日本国内で働く意思のある人の合計である労働力人口はその合計である6942万人ということになります。働く意思があるのに仕事に就けていない人の割合である完全失業率は182/6942を計算して約2.6%ということになります。
ではなぜ182万人、2.6%もの人が職探しを続けているのでしょうか。考えられる可能性は主に2つ挙げられると思います。
一つ目は現在募集されている仕事自体が求職者に比べて少ないことが理由であると考えられます。これは主に不景気の時に発生する失業で、モノやサービスが売れないので企業が雇用を増やそうとしないから起こります。しかし、日本の現状はどうでしょう。一つの指標として2024年3月の有効求人倍率(季節調整値)にまつわる数字を見てみましょう。
厚生労働省が公表しているデータを見ると月間の有効求職者数が約194万人、企業が出す有効求人数が約251万人となっており有効求人数から有効求職者数を割った有効求人倍率は1.3となります(季節調整値では1.28倍です)。
単純に解釈すると求職者の数の1.3倍求人の数があるということですから、仕事自体が足りないということではなさそうです(一方でグラフの左側に注目すると労働市場がリーマンショックの影響を受けていたあった平成23年頃は求人倍率が1を大きく下回って0.7程度ですから、このころは求職者の数に比べて求人数が足りなくて起こっている失業だと言えます。)。
連載2回目「なぜ求人票を出すのか、履歴書を書くのか」に続きます。