『雇用のミスマッチ』 連載2回目
一回目のコラムでは日本の求人数や求職者数の現状を観察して、「雇用のミスマッチ」が失業の起こってしまう主な原因であることを確認しました。今回はこの「雇用のミスマッチ」がなぜ起こってしまうのか理由を考えてみましょう。
最初に求人を出す企業の経営者の立場でこの問題を考えてみます。求職中や転職を考えている方々にとっても、企業からどのような経緯で求人が出てくるのか、求人票が出された背景を考えてみることは自身の職探しにとって有益となることでしょう。
企業はどのような背景をもとに求人票を書いているのでしょうか?
ではその欠員を埋めるために経営者や人事課はどのようなことを行うでしょうか。まず考えられるのは既存の労働者の配置転換や一時的な残業等による労働時間増で対応することです。持っているスキルや能力・人間性などよくわかっている既存の労働者でポジションを回すことができればいいですが、欠員が増えてくるとそれにも限界があります。そこで求人を出して新たな労働者を雇用することによりその欠員を埋める必要がでてきます。
新たな労働者の雇用のために、欠員に対する求人を求職者に周知をしなければならないので、技能・職種・地域・シフトなど細かな条件を提示した求人票を作成します。求人票を出す媒体についても、企業が求めているポジションに適した労働者により訴求できるように、ハローワークなど厚生労働省が行う職業斡旋機関や地方自治体が行っている職業斡旋業務、さらには民間企業が運営している職業紹介事業者など必要に応じて選ぶことになります。
ここからは職探しを考えている求職者の選択の順番です。求人を出すに至った経緯やその求人の条件が求人票に反映されています。まずはその求人を探すところから始まりますが、今の時代はある程度自分の希望する技能・職種・地域・シフトなどの条件を個人的にネット等で検索することにより、素早く自分の希望に沿った求人を見つけることができるかもしれません。
しかし、個人の検索により絞ることができる条件以外にも働く側と雇用する側で一致させなければいけない条件がありますから、職探しは簡単なことではありません。求人を出す企業の立場と同様に求職者も民間・公的機関問わず色々な職業紹介の機関を利用することにより幅広く情報を手に入れる必要があります。地域や時間などの希望する条件、自分が力をより発揮できる職種や技能に適合する条件の求人を探すためには、費用や時間・体力など多大な労力を必要とします。
そして、求職者が希望に沿う求人を見つけてそこで終わりではありません。企業と労働者がお互い納得のいく雇用関係を結べるかどうか面接を通じて確認する必要がありますから、求職者も履歴書(職務経歴書)を書くことにより自分の基本的な身元、学歴や職歴、取得資格、技能・スキルを提示します。その上でお互いの希望がマッチして始めて雇用関係がはじまります。
以上求人を出す企業の立場、職探しをして履歴書を出す労働者の立場から雇用のマッチングのプロセスを簡単に見てみましたが、お互い大変な時間やコストがかかっていることが確認できます。このような時間やコストが企業と労働者のマッチングの調整を遅らせる、あるいは困難にすることにより「雇用のミスマッチ」が発生してしまい、仕事(求人)があるにも関わらず職探しをする人も同時に生まれてしまうのです。しかも、第一回目のコラムで確認した通り求職中の人は現在日本には約180万人いるわけですから、「雇用のミスマッチ」をいかにして減らすかは日本全体での課題と言えます。そして、ハローワークや地方自治体の職業斡旋業務においてミスマッチの軽減のために日々努力が行われているわけです。当事者である求職者・求人企業も相手がどのような背景で求人票や履歴書を書いているのかを理解することにより、より円滑なマッチングが進むことが期待できるでしょう。
次回に続きます。